抵当権抹消登記のよくある質問
(最終更新日:2025年8月21日)
抵当権抹消登記についてのよくある質問についての回答および解説をしています。また、必要書類については、抵当権抹消登記の必要書類に詳しい解説があります。
ただし、抵当権抹消など不動産登記の手続きは、専門的な知識が必要となることが多いため、はじめての方がご自分でおこなうのは難しいかもしれません。このページの解説もかなり専門的なものがありますが、あくまでも参考としてご覧ください(当事務所ではこのページの記載内容について一切の責任を負うものではなく、また、メールや電話のみによるご質問などは受け付けておりません)。
千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)へご相談については、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧になって事前にご連絡くださいますようお願いいたします。また、抵当権抹消登記のページで必要な手続きや費用について解説していますのでぜひお読みください。
抵当権抹消登記についてよくある質問(目次)
7.抵当権者の代表者が変更になっている場合(代理権の不消滅)
1.抵当権抹消登記は司法書士に依頼すべきか?
抵当権抹消登記は、司法書士に依頼せずご自分で行うことも可能ですが、初めての方にとって不動産登記の手続きは分かりづらいものですし、最低2回は平日の昼間に法務局へ行く必要があります(郵送やオンラインによる登記申請も可能ですが、初めての方には困難だと思われます)。
けれども、司法書士に抵当権抹消登記の申請代理を依頼すれば、一度だけ司法書士の事務所へお越しいただくだけで、後はすべての手続きを任せることができます。登記完了後の書類はご自宅へ郵送(書留郵便)されますので、書類を受け取れば手続きは完了です。もちろん、ご依頼者自身が法務局へ行く必要もありません。
そこで、司法書士に支払う手数料(司法書士報酬)と、ご自分で手続きする際にかかる時間や手間を比較し、抵当権抹消登記を司法書士に依頼するかどうかを検討することになるでしょう。例えば、平日の昼間に何度でも法務局へ行けるのであれば、ご自分で登記申請をすることも可能かもしれません。
ただし、抵当権者(借入先の金融機関や保証会社)に合併があった場合などには、抵当権抹消登記を行う前に「抵当権移転登記」が必要になることもあります。このような場合、ご自身で登記手続きを行うのは困難だと考えられます。相手方(抵当権者)の事情により余分な登記が必要になるのは納得しがたいところですが、他に方法はありません。
また、旧住宅金融公庫からの借入で、抵当権移転登記がされていない場合には、抵当権抹消登記の前に、住宅金融公庫から独立行政法人住宅金融支援機構への抵当権移転登記が必要です。
なお、金融機関の合併により抵当権移転登記が必要となる場合、その登記にかかる費用(司法書士費用、登録免許税など)は抵当権者が負担するのが通常です。したがって、抵当権移転登記と抵当権抹消登記を司法書士に依頼した場合でも、依頼者が負担するのは抵当権抹消登記にかかる費用のみです。
2.抵当権抹消登記をしないことのデメリット
被担保債権の全部について弁済があった場合には、抵当権は消滅します(これを「抵当権の付従性」といいます)。つまり、住宅ローンを完済すれば、抵当権抹消の登記をするかどうかに関係なく、抵当権は自動的に消滅するのです。
しかし、実体上は抵当権が消滅していても、抵当権抹消の登記をしなければ登記記録(登記事項証明書)にある「抵当権設定」の記載は消えません。したがって、第三者から見れば、不動産にはいつまでも抵当権が付いたままの状態になります。
このような状態では、住宅の建て替えにともなう新たな融資や、不動産の売却(売買)を行うことができません。さらに、後になって抵当権抹消登記をしようとしても、住宅ローン完済から時間が経過していると必要な書類が手に入らず、多大な費用や手間がかかる恐れもあります。
したがって、住宅ローンを完済したら、必ず速やかに抵当権抹消登記をしておくべきです。
3.抵当権抹消登記の期限は?
上の回答にもあるとおり、住宅ローンを完済すれば、抵当権抹消登記をするかどうかに関係なく抵当権は消滅します。抵当権抹消登記を行うのは、抵当権が消滅した事実を登記簿謄本(登記事項証明書)に反映させるためです。
したがって、抵当権抹消登記は義務ではありませんので、「いつまでにしなければならない」という期限はありません。
ただし、登記をしないでいる間に抵当権者(金融機関等)の代表者が交代してしまうと、すでに受け取っている委任状に記載された代表者名と異なることになってしまいます。また、金融機関等が合併したり、消滅してしまう場合もあります。
そうなると、ご自身で抵当権抹消登記の手続きをするのは著しく困難になり、司法書士に依頼した場合でも通常より高額な費用がかかる可能性があります。
よって、抵当権抹消登記に期限はありませんが、住宅ローンを完済したら速やかに手続きをしておくべきです。
なお、住宅ローンを完済して金融機関から必要書類の交付を受けてから長い期間が経過していても、お手元に抵当権抹消登記の必要書類が残っていれば、それを利用して登記手続きを行えることもあります。
抵当権抹消登記が済んでいないことに気付いたら、すぐに司法書士に相談することをおすすめします。
4.所有者の住所(氏名)が変わっている場合
不動産の登記記録(登記事項証明書)に記録されている所有者の住所が現在と異なるときには、抵当権抹消登記の申請をする前に、登記名義人住所変更の登記をする必要があります。
例えば、新たに土地や建物を購入していても、所有者の住所が引っ越し前の旧住所で登記されていることがあります。また、抵当権設定の登記をした後に転居している場合も、登記名義人住所変更登記をしていなければ、所有者の住所は旧住所のままとなっています。
このような場合には、まず登記名義人住所変更の登記を行った後に、抵当権抹消登記の申請をすることになります(実際の登記手続きでは、登記名義人住所変更と抵当権抹消の登記申請を連件で行うのが通常です)。
また、不動産の登記事項証明書に記載されている所有者の氏名が現在と異なる場合にも、抵当権抹消登記の申請をする前に、登記名義人氏名変更登記をする必要があります。
例えば、不動産を購入した後に結婚などで姓(名字)が変わっている場合、登記名義人氏名変更登記をしていなければ、所有者の姓は旧姓のままとなっています。そのため、抵当権抹消登記を行う前に登記名義人氏名変更登記を済ませる必要があるのです。
5.抵当権者の商号(本店)が変わっている場合
不動産の登記記録(登記事項証明書)に記載されている抵当権者の本店や商号などが現在のものと異なる場合であっても、それらについての変更登記をする必要はなく、そのまま抵当権抹消登記の申請を行うことができます。
この場合、登記記録上の本店(商号)から現在のものまでの変更経過が分かる抵当権者(金融機関など)の登記事項証明書(履歴事項証明書、閉鎖事項証明書、閉鎖謄本等)の添付が必要です。ただし、会社法人等番号を提供する場合には登記事項証明書の添付は不要であるため、通常は変更証明情報となる書類の添付も不要となります。
ただし、変更の経緯を証明するための閉鎖事項証明書に記載されている会社法人等番号が現在のものと異なる場合には、その閉鎖事項証明書の添付を省略することはできません。これは、会社法人等番号が変更されている場合には、法務局で変更の経緯を確認できないためです。
会社法人等番号の提供による、法人の住所変更等を証する情報の添付省略については、法務省の「不動産登記令等の改正に伴う添付情報の変更に関するQ&A」で解説されています。
なお、商号が変わっている場合について、単なる商号変更ではなく、抵当権者が吸収合併されている場合には、抵当権抹消登記の前に抵当権移転登記をしなければならないこともあります。詳しくは次の質問(抵当権移転登記が必要な場合)をご覧ください。
6.抵当権移転登記が必要な場合
抵当権抹消登記の申請をしようとする際、抵当権が消滅するよりも前に抵当権者が吸収合併されている場合には、抵当権抹消登記をする前に抵当権移転登記の申請をする必要があります。
住宅ローンの借入れにともない設定されている抵当権であれば、住宅ローンの完済前に抵当権者が吸収合併されている場合には、抵当権抹消登記に先だって抵当権移転登記の申請をしなければならないということです。
たとえば、株式会社Bが株式会社Aを吸収合併している場合、次のように合併を原因とする抵当権移転登記をします。
登記申請書
登記の目的 ○番抵当権移転
原因 平成○年○月○日合併
抵当権者 (被合併会社 株式会社A)
東京都中央区○○町○丁目○番○号
株式会社B
(会社法人等番号 ××××-××-××××××)
代表取締役 松戸 一郎
添付書類 登記原因証明情報 代理権限証書 会社法人等番号
(以下省略)
上記の場合と異なり、住宅ローンの完済後に抵当権者が吸収合併されているのであれば、合併による抵当権移転登記をする必要はなく、承継会社(合併後の存続会社)が登記義務者となり当権抹消登記の申請をします。
登記申請書
登記の目的 ○番抵当権抹消
原因 平成○年○月○日弁済
権利者 千葉県松戸市松戸1176-2
市川 太郎
義務者 (被合併会社 株式会社A)
東京都中央区○○町○丁目○番○号
上記承継会社 株式会社B
(会社法人等番号 ××××-××-××××××)
代表取締役 松戸 一郎
添付書類 登記原因証明情報 登記識別情報(登記済証) 合併証明書 代理権限証書 会社法人等番号
(以下省略)
なお、抵当権者が合併している場合の、抵当権抹消登記(および、抵当権移転登記)については、不動産登記の専門家である司法書士に依頼せずに手続きをするのは困難だと思われます。上記の申請書書式などはあくまでも参考としてご覧ください。
7.抵当権者の代表者が変更になっている場合(代理権の不消滅)
住宅ローンの完済後、金融機関などから抵当権抹消登記に必要な書類を交付してもらったが、すぐに登記をしないでいるうちに抵当権者の代表者(代表取締役など)が変更になってしまったとします。この場合、委任状に記載されている代表者の氏名が、現在の代表者と違うこととなりますが、どのようにすれば抵当権抹消登記をすることができるのでしょうか。
不動産登記法第17条に代理権の不消滅に関する規定があります。
登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。
一 本人の死亡
二 本人である法人の合併による消滅
三 本人である受託者の信託に関する任務の終了
四 法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更
この規定により、登記申請の委任をした後になって本人が死亡した場合などであっても、委任を受けた代理人の権限は消滅しないことになります。上記の法定代理人には法人の代表者も含まれるので、抵当権者の代表者が変更になっている場合でも、旧代表者名で発行された委任状により抵当権抹消登記をおこなうことが可能であるわけです。
この場合の手続きについては、次の先例(法務省民事局長通達)があります。
登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更によっては消滅せず、この法定代理人には法人の代表者も含まれるものとされているところ、当該代表者が死亡等した場合であっても、当該法人が会社法人等番号を有する法人であるときは、当該法人の会社法人等番号を提供しなければならない。この場合には、申請情報に当該代表者の代表権が消滅した旨を明らかにしなければならないものとし、当該会社法人等番号によって当該代表者の資格を確認することができないときは、その資格を確認することができる登記事項証明書を提供しなければならないものとする(平成27年10月23日民二第512号)。
また、上記先例を踏まえて、登研828号74頁に次のとおりのが解説があります。
代理権不消滅の場合には、申請情報に当該代表者の代表権が消滅した旨を明らかにしなければならず(当該代表者が代表権を有していた時期を明らかにする必要はない)。
それ以前は、理権の不消滅のときに抵当権抹消登記ができるのは、次に掲げる場合であるとされていました(平成5年7月30日民三5320)。
- 登記申請の代理人が当該代表者の代表権限が消滅した旨及び当該代表者が代表権限を有していた時期を明らかにし、当該法人の登記簿でそのことを確認することができる場合
- 当該代表者の代表権限を証する書面(作成後3か月以内のものに限る。)が申請書に添付されている場合
それが現在では、「登記義務者の代表者、代表取締役○○○○の代表権限は消滅しており、代理権不消滅による登記である。」というような記載で足りるようになっています。
さらに、会社法人等番号を提供することで、代表権限を証する書面(登記事項証明書など)の提供は不要となっていますが、会社法人等番号によって当該代表者の資格を確認することができないときは、その資格を確認することができる登記事項証明書を提供しなければなりません。
また、申請書に記載する代表者は、新旧いずれの氏名にすべきかについては考えが分かれているようですが、東京法務局や千葉地方法務局の管轄区域では現在の代表者の氏名を記載する取扱いになっていると思われます。
最後に余談となりますが、代理権の不消滅による登記をしようとする場合に、抵当権の解除日などがいつであるかについては注意が必要です。抵当権解除証書の解除日などを後から書き入れなければならないときに、代表者の代表権限が消滅した後の日付を書いてしまうと、そもそも代表権限がない人による委任であることになってしまいます。
8.金融機関などから交付された書類を紛失した場合
住宅ローンを完済し、借入先の金融機関などから抵当権抹消登記に必要な書類を受け取ったものの、抵当権抹消登記の申請をしないでいるうちに書類を紛失してしまった場合、どのようにすれば抵当権の抹消登記を行うことができるのでしょうか。
まず、金融機関などから抵当権抹消登記の必要書類を受け取ってから長い年月が経過していても、その書類がすべて残っているのであれば、抵当権者(金融機関など)の協力を得なくても抵当権抹消登記を行える場合があります(ただし、このようなケースでの抵当権抹消登記をご自分でおこなうのは困難ですから、残っている書類を持参のうえ司法書士にご相談ください)。
しかし、書類を紛失してしまった場合には、抵当権者の協力を得なければ抵当権抹消登記を行うことはできません。登記申請のための委任状や登記原因証明情報(抵当権解除証書など)を再発行してもらう必要があります。また、抵当権抹消登記の必要書類である「登記済証(または登記識別情報通知書)」は再発行されないため、通常と異なる手続きが必要になります。
具体的には、登記済証(または登記識別情報通知書)を紛失している場合には、法務局による事前通知制度を利用できます。これは、登記済証(または登記識別情報通知書)を添付せずに抵当権抹消登記を申請すると、法務局から登記義務者(抵当権者)に通知書が送付され、その通知が返送されることで登記が実行される制度です。
登記申請の際には、登記義務者(抵当権者)の委任状が必要であり、そこには会社実印で押印する必要があります。また、この会社実印に関する印鑑証明書も必要です(ただし、申請情報に会社法人等番号を記載すれば添付を省略できます)。その他の必要書類は、通常の抵当権抹消登記と変わりません。
9.その他の質問と回答
司法書士高島一寛のブログにも次の記事があります。
同一の債権を担保する抵当権が、2つ以上の不動産に設定されている場合には、1件の申請で一括して抵当権抹消登記を行うのが通常です。また、1つの不動産に、同一の権利者のために設定された2つの抵当権があり、その抹消原因および日付が同一であれば、1件の申請により一括して抵当権抹消登記をすることができます。
所有者が異なる2つ以上の不動産に、同一の債権を担保する抵当権が設定されている場合には、登記の目的・登記原因およびその日付が同一であるときに限り、1通の申請書で抵当権抹消登記を一括して申請することができます。
抵当権抹消登記の申請を行う際に、抵当権が消滅するより前に抵当権者が吸収合併されている場合は、抵当権抹消登記の前に抵当権移転登記の申請をする必要があります。
抵当権抹消登記をする際に、抵当権者が破産手続開始決定を受けているときの手続きです。破産者(抵当権者)の破産管財人を登記義務者として、抵当権抹消登記の申請をおこないました。
根抵当権者が株式会社協和銀行となっている根抵当権抹消のため、根抵当権登記名義人名称変更、根抵当権一部移転、根抵当権共有者株式会社あさひ銀行の権利移転の登記をした後、株式会社りそな銀行、株式会社埼玉りそな銀行を義務者として根抵当権抹消登記の申請をしました。
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