数次相続による相続登記(遺産分割協議書の作成)
相続登記をするときに、複数の相続が関係してくることがあります。不動産の所有者が亡くなったことにより相続が開始したものの、その相続登記手続きをしないでいる間に、さらにその相続人であった方が亡くなってしまったような場合です。
このような数次相続が生じている場合の相続登記の手続きをする際には、相続登記のなかでも専門的な知識が必要となることもあります。数次相続による相続登記の手続きについても豊富な経験と実績のある、千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)にご相談ください。
ご相談は予約制なので、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧になって事前にご連絡くださいますようお願いいたします。また、数次相続などではない一般の相続登記については、相続登記のページをご覧ください。
数次相続による相続登記(目次)
1.数次相続とは
2.数次相続による相続登記の手続き
2-1.数次相続の場合の遺産分割協議書
2-2.相続登記における登記原因
2-3.最終の相続人に直接登記ができない場合
1.数次相続とは
ある方の死亡により相続が開始したが、遺産分割協議や相続登記をしないでいるうちに、相続人中の1人が亡くなってしまったとします。
このように、前の相続の手続きをしないでいるうちに、次の相続が開始してしまっている状態を数次相続といいます。一つ目の相続(第1次相続)に、二つ目の相続(第2次相続)が続いているわけです。
上の図では、平成20年に夫が亡くなった際の法定相続人は妻、および長女、長男の3人でした。しかし、相続登記などの遺産相続手続きをおこなわないでいるうちに、平成25年に長男が亡くなってしまいました。
この場合、長男に属していた父の遺産に対する相続権を、その法定相続人である妻、および子1,子2が相続することになります。よって、夫が所有する不動産についての遺産分割協議に参加すべきは、妻、長女に加え、長男の妻、および子1,子2であり、その相続分は下図のとおりです。
複数の相続が関連する点で、代襲相続との違いが分かりづらいかもしれません。しかし、数次相続の場合には、長男は自身がいったんは法定相続人となっているのであり、この時点で遺産相続の手続きをおこなっていれば何も特別なことはありませんでした。
ところが、夫(長男から見ると父)の遺産相続手続きをおこなう前に、長男についての相続が開始してしまったため、その持っていた相続権を、法定相続人である長男の妻、および子1,2が相続したわけです。
代襲相続との大きな違いは、長男の子だけでなく、長男の妻にも義父の遺産に対する相続権があることです。これは、長男(夫)の代襲相続人となったわけではなく、夫が持っていた相続権を、その相続人として引き継いだからです。
2.数次相続による相続登記の手続き
上図のようなケースで、被相続人の妻が不動産を引き継ぐとします。この場合、相続人全員(妻、長女、長男の妻、子1,2)により、遺産分割協議をおこない、その結果を記した遺産分割協議書を作成、添付することで相続登記をします。
2-1.数次相続の場合の遺産分割協議書
数次相続の場合の遺産分割協議書では、誰が被相続人であるのか、また、誰の相続人として協議に参加するのかが分かるように書きます。たとえば、上図のケースでは当事者を次のように記載すればよいでしょう。
当事者以外の作成例については、遺産分割協議書のページをご覧ください。また、相続人中に未成年者がいる場合には、未成年者のための特別代理人選任が必要です。
遺産分割協議書(例)
最後の本籍 千葉県松戸市松戸○番地の○
最後の住所 千葉県松戸市松戸○番地の○
被相続人 A(夫) (平成 年 月 日亡)
住所 千葉県松戸市松戸○番地の○
相続人 妻 (昭和 年 月 日生)
住所 千葉県流山市南流山○丁目○番地の1
相続人 長女 (昭和 年 月 日生)
最後の本籍 千葉県柏市柏1丁目○番
相続人兼被相続人 B(長男) (平成 年 月 日亡)
住所 千葉県柏市柏1丁目○番○号
上記B相続人 長男の妻 (昭和 年 月 日生)
住所 千葉県柏市柏1丁目○番○号
上記B相続人 子1 (平成 年 月 日生)
住所 千葉県柏市柏1丁目○番○号
上記B相続人 子2 (平成 年 月 日生)
(以下 省略)
なお、上記のように氏名の前に肩書を入れることにより、誰の相続人としてどのような地位で遺産分割協議書に参加しているのかが明確になりますが、「数次相続が生じている場合において最終的な遺産分割協議の結果のみが記載された遺産分割協議書を添付してされた相続による所有権の移転の登記は、これをすることができる(平成29年3月30日民二237)」との先例もあります。これに従うとすれば、各相続人の肩書きなどは入れなくとも差し支えないことになります。
また、上記先例の中に「上記各相続における相続人又は相続人の地位を承継した者であるFからSまでの全員の署名押印があり、第一次相続から第三次相続までの遺産分割協議をするためにそれぞれ必要な者によって遺産分割が行われたと考えられます」との記述があります。数次相続の各相続における相続人又は相続人の地位を承継した人全員の署名押印があれば良いわけです。
2-2.相続登記における登記原因
上記の遺産分割協議の結果、被相続人の妻が不動産を取得することとなった場合、相続登記をする際の登記原因は「平成 年 月 日 相続」です(年月日は被相続人Aの死亡日)。
なお、本例で被相続人の長男の子(被相続人の孫)が不動産を取得することとなった場合でも、一度の登記により、被相続人Aから孫へ所有権移転登記をすることが可能です。この場合、相続登記をする際の登記原因は次のように記載すべきでしょう。
登記申請書
登記の目的 所有権移転
原因 平成 年 月 日 B相続 ・・・ 日付は被相続人Aの死亡日
平成 年 月 日 相続 ・・・ 日付は長男Bの死亡日
(以下 省略)
妻が相続する場合には、被相続人である夫から直接、所有権が移転しています。したがって、登記原因として記載すべきは被相続人Aの死亡日のみです。
これに対し、被相続人の孫が相続する場合には、被相続人の子(長男B)がいったん相続(第1次相続)したのを、さらに被相続人の孫が相続(第2次相続)しているわけです。
このような場合であっても、長男Bが単独相続しているときには、被相続人から孫へ1件の申請で相続登記が可能ですが、中間相続の登記原因も併記するのです。
2-3.最終の相続人に直接登記ができない場合
第1次相続開始後に、長男と長女が2分の1ずつ相続するとの遺産分割協議をおこなっていたとします。その後、相続登記をする前に第2次相続が開始したため、長男が相続するはずだった2分の1を長男の妻が相続するとの遺産分割協議をしたとします。
この場合、最終的には長女2分の1、長男の妻2分の1の共有名義になりますが、2通の遺産分割協議書を添付しても、被相続人Aから、長女および長男の妻へ1件の申請によって直接の相続登記することはできません。
被相続人Aから、長女および長男への相続登記をした後に、長男からその妻への相続登記をする必要があります。このように、第1次相続が単独相続で無い場合には、最終の相続人へ直接、相続登記することは認められていないのです。
2件の申請書の記載は次のようになります(説明に必要な箇所のみ抜粋)。
原因 平成 年 月 日 相続 ・・・日付は被相続人Aの死亡日
相続人 持分2分の1 長女
2分の1 長男B
原因 平成 年 月 日 相続 ・・・日付は長男Bの死亡日
相続人 長男Bの妻
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これまでに当事務所が取り扱った相続登記の申請件数は1,200件を超えています(司法書士高島一寛が代理人として登記申請をした、2002年2月の事務所開業から2023年12月末までの、相続を原因とする所有権移転登記の申請件数の実績)。
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