遺言書の作り方(遺言の基本)
このページでは、遺言についての基本をわかりやすく解説しています。どんな場合に遺言書を書くべきなのか、遺言書の種類と選び方のポイントなどについておわかりいただけます。
遺言書の作成(目次)
1.どんな場合に遺言書を書くべきなのか
2.遺言書の種類と特徴
2-1.自筆証書遺言
2-2.公正証書遺言
2-3.秘密証書遺言
3.遺言書の条項(さまざまな文例、記載例)
4.法的に有効な遺言書とは(法定遺言事項)
5.遺言書の関連情報
1.どんな場合に遺言書を書くべきなのか
遺言書を作成しておらず、法定相続人が2名以上いるときには、相続人の全員により遺産分割についての話し合いをする必要があります。そこで、相続人全員により遺産分割協議をおこなうのが困難だと予想されるときには、遺言書を作成する必要性が高いといえます。
たとえば、前妻(前夫)との間にも子がいたり、婚外子(非嫡出子)がいる場合などには、遺言書作成の必要性がとくに高いといえるでしょう。子供がいない夫婦で、被相続人の配偶者および兄弟姉妹が相続人になるときも同様です。
また、被相続人の配偶者および子が法定相続人である、もっとも多い家族の形態であっても、遺産の配分を巡って争いが生じるのは決して珍しい話ではありません。とくに、おもな財産が自宅不動産だけというような場合は、法定相続分どおりに財産をわけるのが難しいことも多いです。そのため、多額の財産があるときよりも、かえって遺産分割協議が難航することがあるのです。
上記のような場合でも、遺言により誰がどの遺産を相続するかを指定しておけば、遺産相続を巡る相続人間の争いの多くを、未然に防ぐことができます。
相続人による遺産分割協議がうまくいかない心配が少しでもあるならば、円満な遺産相続を実現するために、遺言書を作成しておくべきだといえます。このほか、遺言により、内縁の妻や、子の配偶者など、法定相続人以外の人に財産を残そうとする場合(遺贈といいます)には、遺言書の作成が必須です。
2.遺言書の種類
遺言書は法律に定められた方式により作成しなければなりません。
遺言の方式は民法により普通方式と特別方式の2つが定められていますが、ほとんどの遺言書は普通方式により作成されております。そして、普通方式の遺言にも、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。
実際に作成されている遺言書としては、自筆証書遺言、公正証書遺言のいずれかが圧倒的多数です。平成22年度に全国の公証役場で作成された公正証書遺言が81,984件に対し、秘密証書遺言は95件に過ぎません。
自筆証書遺言については正確な数を知ることは不可能です。しかし、平成21年度に全国の家庭裁判所で受理された書遺言検認の新受件数は13,962件ですから、実際にはもっと多くの自筆証書遺言が作成されているはずです。
2-1. 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者自身が1人で作成できますから費用はかかりませんし、他人に遺言の内容を知られることもありません。
自筆証書遺言の大きなメリットは、費用をかけず作成できるため、生活状況の変化に応じて何度でも書き直しができることです。そこで、まずは自筆証書遺言を作成しておいて、後になって必要だと思ったときに公正証書遺言を作ることももちろん可能です。
上記のとおり、自筆証書遺言は手軽に作成できるものではありますが、法律に定められたとおりに作成しなけければならず、少しでも間違いがあるとその効力が認められない怖れがあります。したがって、不安がある場合には専門家に相談したうえで作成するのが確実です。
また、自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所での遺言書検認手続を受けなければならないので、遺言の執行を出来るまでに時間と手間がかかります。さらに、保管している間に紛失してしまったり、相続開始後に遺言書が発見されなければ意味がありませんから、保管方法に注意する必要があります。
専門家の関与による自筆証書遺言の作成
自筆証書遺言であっても、司法書士、弁護士など法律専門家に相談したうえで作成すれば、方式の不備により無効になったり、遺言内容が実現できない心配はなくなります。
また、遺言書の保管も専門家に依頼しそれをご家族に伝えておけば、遺言書が発見されない危険性もなくなりますし、遺言が効力を生じるまで内容を秘密にしておくこともできます。
つまり、専門家に相談し作成するのであれば、自筆証書遺言の短所はほとんど補えるわけです。専門家の関与による自筆証書遺言の作成も、公正証書遺言と並び有力な選択肢だといってよいでしょう。
2-2. 公正証書遺言
公正証書遺言は公証人によって作成されるので、法律的に有効な遺言を間違いなくすることができます。
作成した遺言書の原本は公証役場で保管されますから、改ざん・紛失の心配がありません。また、自筆証書遺言では必ずしなければならない、家庭裁判所による検認手続が不要なので、相続人の負担が軽減されます。
公正証書遺言では、公証人が関与することに加え、2名の証人が必要とされるため、遺言の内容を完全に秘密にすることはできません(ただし、立会証人の手配も司法書士におまかせくだされば、遺言書作成の事実や、遺言内容をご家族に知られないようにすることも可能です)。
公証人の費用(手数料)がかかるので気軽に作り直すのには向きませんが、最も安心確実な遺言として公正証書遺言をお勧めしています。
公正証書遺言の作成を、当事務所へご相談・ご依頼くだされば、遺言書案の作成から公証役場との事前打ち合わせまでの手続きを、すべて司法書士にお任せいただけます。
また、立会証人の手配や、遺言書の保管・執行も承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
2-3. 秘密証書遺言
秘密証書遺言では、作成した遺言書に封をした状態で公証役場に持参します。そして、封がされた状態のまま、公証人による公証の手続きがおこなわれます。
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と異なり全文を自筆する必要がないこと、また、公証人および証人2人以上の立会により作成するため、遺言書の存在が明らかになることなどがメリットだといえます。
しかし、公証人は遺言内容に関与しませんから、自筆証書遺言に比べて法律的な有効性が高くなるものではありません。また、公正証書遺言と異なり、家庭裁判所での検認も必要です。
遺言内容を秘密にするのが目的であれば、自筆証書遺言を作成した上で、信頼できる知人または専門家(弁護士、司法書士)に保管を依頼しておけば済むのですから、秘密証書遺言を選択すべきケースは限られるでしょう。
3.遺言書の条項例(さまざまな文例、記載例)
遺言書に書いたことを、法的に効力のあるものにするには、その書き方が大切です。たとえば、「遺言者は、遺言書の有する一切の財産を、妻○○(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。」と書いたならば、遺言者の意思に疑問を挟む余地はありません。
しかし、これを「相続させる」ではなく、「遺贈する」と書いてしまうと、不動産の名義変更(所有権移転登記)をする際に、問題が生じることがあります。
「相続させる」であれば、不動産を引き継ぐものとされた相続人が単独で登記申請できたのが、「遺贈する」とした場合には他の法定相続人全員の協力が必要となることもあるのです。
些細に感じられることでも、遺言書はルールに則って書かないと大きな問題が生じたり、最悪の場合にはせっかく書いたことが実現できない恐れもあります。
そこで、自らの思いを確実に実現させるためには、遺言書にどのような記載をするのが良いのか、基本的な条項例(文例、記載例)について解説します。
4.法的に有効な遺言書とは
遺言とは、遺言者(被相続人)の最終の意思を表すもので、遺言者自身がその遺産の処分方法を定めることにより、相続を巡る争いを防止するために行うものです。
遺言をするためには遺言書を作成します。遺言書の作成方法は法律(民法)で定められていますから、法律的に有効な遺言をするには、民法の定めに従って遺言書を作成しなければなりません。
また、遺言書に書けば何でも法律的に有効なわけではなく、遺言によってできることについても法律で定められています。たとえば、法的な効力をもつ遺言内容としては、法定相続分と異なる相続分を定めたり、財産を相続人以外の第三者に遺贈する場合などがあります。
なお、遺言書には法律で定められた事柄以外に、自分の葬儀の方法についての希望や、残された家族にへの要望などを書くことももちろん可能ですが、それらはあくまでも希望であり、相続人に対して強制力を持つものではありません。
5.遺言書の関連情報
公正証書遺言の作成も司法書士にご相談ください。公証人との打ち合わせ、立会証人の用意も司法書士におまかせいただけます。
自らの思いを確実に実現させるためには、遺言書にどのような記載をするのが良いのか、基本的な条項例(文例、記載例)について解説します。
子供がいない夫婦、兄弟姉妹が相続人となる場合など、遺言書を書く目的に応じての遺言文例や注意事項について解説しています。
自筆証書など、公正証書以外による遺言書は、相続開始後に家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
遺言により遺言執行者が指定されていない場合、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことができます。
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