相続登記に登記済権利証(登記識別情報)は必要か
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相続登記に登記済権利証(登記識別情報)は必要か
1.相続登記に権利証は原則として不要
2.相続登記で権利証が必要な場合
3.権利証、登記済証、登記識別情報の用語について
1.相続登記に権利証は原則として不要
不動産の名義変更(所有権移転の登記申請)をするとき、売買、贈与などが登記原因である場合には、現在の登記名義人が持っている権利証(登記済証)、または登記識別情報を添付する必要があります。
これは、登記をすることによって所有権の登記名義人ではなくなる人(登記義務者)に、その登記申請手続きをする意思があることを確認するためです。自らが所有している権利証を差し出すことで、登記申請意思があることを明らかにするわけです。
ところが、相続登記では、登記をする時点において、現在の登記名義人である被相続人の意思確認をすることはそもそも不可能です。もしも、権利証を保有している相続人がそれを持参したとしても、被相続人の意思確認にならないのは当然です。
そのため、相続登記においては権利証(登記識別情報)の添付は不要とされているのです。そして、権利証による登記義務者の意思確認の代わりに、戸籍謄本や遺産分割協議書、共同相続人の印鑑証明書を提出することなどによって申請人が所有権を取得したことを証明するわけです。
2.相続登記で権利証が必要な場合
相続登記では権利証(登記済証、登記識別情報)が不要であるのは上記のとおりですが、登記実務においては、相続登記の申請の際に権利証の提出を求められる場合があります。
それは、「被相続人の最後の住所と、登記事項証明書に記載されている住所とが異なる場合に、住所移転の経緯を証する書類(住民票除票、戸籍・除籍の附票など)を添付できないとき」です。
引っ越しをしたのが1回のみであれば、被相続人の住民票除票に記載されている「前住所」が、登記事項証明書に記載されている住所と同一であるはずです。そのため、「被相続人」と「その不動産の所有者」との同一性が、住民票除票のみによって証明できることになります。
しかし、その不動産を購入し所有権の登記名義人になった後に、複数回の転居をしているような場合、現時点で取得可能な住民票除票、戸籍(除籍)の附票などによって、全ての住所移転の経緯を証明することができないこともあります。
この場合、厳密にいえば、「被相続人」と「その不動産の所有者」との同一性を証明する書類が存在しないことになります。
そこで、被相続人がその不動産の所有者であることを裏付ける資料の1つとして、権利証(登記済証、登記識別情報)の提出が求められることがあります。
もちろん、被相続人自身が権利証を持参することはできないわけですが、「遺品の中に権利証があるならば、その人が所有者であった可能性が高いであろう」ということです。
役所で交付を受けることができた住民票除票、戸籍(除籍)の附票、登記簿上の住所についての不在住証明書に加え、権利証(登記済証、登記識別情報)を提出することで、住所移転の経緯を証する書類が揃わない場合でも、相続登記の手続きが可能になるのが通常です。
この他、相続人全員による上申書の提出を求められる取り扱いもありましたが、現在では不要である場合がほとんどだと思われます。
なお、ここで書いた取り扱いについては、法務局によっても異なる場合もあるので、申請先の法務局へ確認した方が良いかもしれません。ただし、当事務所が相続登記の申請をする場合、住所がつながらなくとも権利証さえあれば問題ないと判断し、そのまま登記申請をしているのが通常です。
3.権利証、登記済証、登記識別情報の用語について
平成17年に不動産登記法が改正されるまで、相続、贈与、売買などにより不動産の所有権を取得した際には、登記済権利証が法務局から交付されていました。
なお、「権利証」とは俗称であり、正式用語では「登記済証」といいますが、一般には権利証、または登記済権利証などと呼ばれています。
現在では、権利証(登記済証)に代わり登記識別情報通知の制度が導入されているので、登記の時期によっては登記識別情報通知書が交付されているかもしれません(登記識別情報について詳しくはこちら)。
なお、今後は新たに登記済証が発行されることはありませんが、不動産の所有者が変わらない限り、既存の登記済証はずっとそのまま有効です(お手元の登記済証を、登記識別情報に交換してもらうこともできません)。
所有権の登記名義人になったのが何十年も前であるようなときには、権利証(登記済証)が古くなり用紙が傷んでいるような場合もあります。それでも、権利証であることに変わりはありませんので、大切に保管しておく必要があります。
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これまでに当事務所が取り扱った相続登記の申請件数は1,200件を超えています(司法書士高島一寛が代理人として登記申請をした、2002年2月の事務所開業から2023年12月末までの、相続を原因とする所有権移転登記の申請件数の実績)。
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