被相続人の最後の住所と、登記簿上の住所が違う場合
(最終更新日:2023年9月21日)
不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)には、所有者の住所および氏名が書かれています。この住所は、引っ越しをして住民票の住所が変わった場合でも、自動的に書き換えられるわけではなく、不動産の所有者が自ら登記申請ををしなければならないのが原則です(この場合におこなうのが、登記名義人住所変更の登記です)。

そのため、登記簿上の住所が古いままになっているケースも良く見受けられますが、相続による所有権移転登記の申請をする際には、登記簿上の住所と被相続人の最後の住所が異なる場合であっても、そのまま登記をすることができます。
相続による場合でなく、売買や贈与などを原因とする所有権移転登記の申請をする際には、登記簿上の住所と現住所が異なる場合には、事前に住所変更の登記をしなければなりません(所有権登記名義人住所変更)。ところが、相続が原因である場合は、同じ所有権移転登記であっても、事前に住所変更登記をしないで良いわけです。
被相続人の住所が変わっている場合の必要書類
被相続人の最後の住所と登記簿上の住所が異なる場合には、相続による所有権移転登記(相続登記)をする際に、住所移転の経緯を証明できる書類が必要です。
つまり、登記簿に記載されている住所から最後の住所に至るまでの、全てのつながりが分かるだけの住民票(除票)や、戸籍(除籍)の附票などの提出が求められるわけです。
これは、登記簿に記載されている所有者と、被相続人が同一人物であることを、書類上で証明するために求められるものです。
被相続人と相続人との親族関係や、相続の開始(被相続人の死亡)などの証明は戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)によります。ところが、戸籍謄本などに書かれているのは本籍のみであり住所は記載されていません。
一方、登記簿謄本に書かれているのは住所と氏名のみです。多くの場合、本籍と住所は異なりますから、戸籍謄本に書かれている人と、登記簿謄本に書かれている人とが同一人物であるのか判断できません。
そこで、本籍が記載されている住民票(または、戸籍の附票)によって、本籍と住所を結びつける必要があるわけです。さらに、被相続人の住民票除票の住所と、登記簿上の住所が異なる場合には、上記のとおりそのつながりが分かるだけの書類も求められるわけです。
住所変更をしないでいた場合の問題点
先に述べたとおり、相続による所有権移転登記をする際には、登記簿上の住所と被相続人の最後の住所が異なる場合であっても、事前の住所変更登記(所有権登記名義人住所変更登記)は不要なのですが、住所移転の経緯をすべて証明できるだけの住民票(または、戸籍の附票など)が必要です。
ところが、転居をしたことにより住民票が除票となった場合、その時から5年間が過ぎると、その除住民票は保存期間経過により廃棄されます。戸籍の附票についても、戸籍が転籍などにより消除(または、改製)されてから5年が経つと同様に廃棄処分となってしまいます。
住民票の除票及び戸籍の附票の除票の保存期間が延長されました
住民基本台帳法施行令の一部改正(令和元年6月20日施行)により、平成26年6月20日以降に消除または改製された住民票の除票および戸籍の附票の除票の保存期間が5年から150年に延長されました。ただし、同施行令の施行日が令和元年6月20日であるため、5年前の平成26年6月19日以前に消除または改製された住民票の除票および戸籍の附票の除票については、すでに保存期間が経過しているため、適用の対象外となります。
つまり、現在では平成26年(西暦2014年)6月20日以降に消除または改製された住民票の除票および戸籍の附票の除票の保存期間は150年になっているので、被相続人が死亡したのが平成26年(西暦2014年)6月20日であれば、その後150年間は住民票除票が取得できるわけです。また、戸籍の附票の場合には、被相続人の死亡後でも同籍の存命者がいる限り消除されないので、被相続人の死亡が平成26年(西暦2014年)6月20日より前であっても取得できる可能性があります。
住所を証明するための書類は、住民票、戸籍の附票のいずれかに限られます。そのため、登記簿上の住所と、被相続人の最後の住所のつながりを証明できる書類を取ることは不可能となります。
その場合でも、不在籍証明書・不在住証明書、不動産を取得したときの登記済権利証、さらには相続人全員による証明書などを提出することで、相続登記が可能となるのが実務の取り扱いです。
しかし、通常の相続登記をするのに比べて、手間や費用が大幅に増える恐れもありますから、住所を移転したときには、所有している不動産の住所変更登記もおこなっておくのがよいでしょう。
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