遺言書の文言と登記原因(相続か遺贈か)
(最終更新日:2025年9月19日)
相続人に遺産を引き継がせようとする場合には、「相続させる」との文言を用いるのが原則です。しかし、相続人に対して「遺贈する」との文言が使われている遺言書を目にすることがあります。
不動産登記実務においては、遺言による所有権移転の登記原因は遺言書の記載に従い、「遺贈」または「相続」として取り扱われます。具体的には、遺言書に「遺贈する」または「遺産を贈与する」と記載されている場合には、登記原因は「遺贈」とされます。
令和5年4月1日以降、遺贈により不動産を取得した相続人は、その所有権移転登記を単独で申請できるようになっています。したがって、登記原因が「相続」ではなく「遺贈」である場合であっても、所有権移転登記を行うにあたり特に手続きが難しくなることはありません。
それでも、登記申請を行う際には、登記原因を正しく判断することが必要です。このページでは、遺言に記載された文言に応じた登記原因について解説しています。
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遺言書の文言と登記原因(相続か遺贈か)【目次】
1.相続人に対する遺贈では単独申請が可能に
法律改正により、令和5年4月1日からは、遺贈により不動産を取得した相続人は、その所有権移転の登記を単独で申請することができるようになっています。また、令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた相続人についても同様に、単独で所有権移転登記の申請ができることとなっています。
法律改正により、令和5年4月1日からは、遺贈により不動産を取得した相続人は、その所有権移転登記を単独で申請できるようになりました。また、令和5年4月1日以前に開始した相続で遺贈を受けた相続人についても、同様に単独で所有権移転登記の申請を行うことができます。
従前は、遺贈による所有権移転登記は、受遺者である相続人と、遺言執行者(または遺言者の相続人全員)との共同申請による必要がありました。これが法律改正により、現在では、相続人に対する遺贈の場合には、相続登記と同様に、受遺者である相続人が単独で遺贈登記を申請できるようになったのです。
その結果、自筆証書遺言などに基づいて相続登記を行う場合に、登記原因が「相続」であっても「遺贈」であっても、特に問題は生じなくなりました。
相続人に対する遺贈による所有権移転登記については、「相続人に対する遺贈と登記の方法」のページで詳しく解説をしています。
2.遺言書の文言と登記原因
自筆証書遺言に基づいて相続登記を行おうとする場合、その遺言書が法的に有効であり登記可能かどうか、また、登記が可能であったとしても、その登記原因が「相続」なのか「遺贈」なのかが問題となることがあります。
ここでは、その遺言書を利用した登記が可能であることを前提に、登記原因について解説します。
なお、せっかく遺言書があっても、それが法的に有効でない場合には、相続人による遺産分割協議を行うなどの対応が必要となります。
(1) 相続人に対して「遺贈する」と書かれた遺言書
相続人に対して「遺贈する」、または「遺産を贈与する」というような文言が使われている場合には、登記原因は原則として「遺贈」となります。
不動産登記実務において、遺言による所有権移転の登記原因は、遺言書の記載内容により「遺贈」または「相続」とするとの取扱いをしており、その旨の実例(登研369号82頁)もあり,遺言書の文言が「遺贈する」または「遺産を贈与する」とある場合の登記原因は「遺贈」ということになる(登研880号110頁)。
「遺言者は、後記受遺者(相続人のうちの1人)に後記不動産物件を遺贈する」旨の記載のある公正証書を添付した所有権移転の登記の登記原因は、「相続」ではなく「遺贈」とすべきである(昭和48年12月11日民三8859)。
なお、上記の例外として、相続財産の処分を受ける者が相続人の全員である場合には、相続人に対して「遺贈する」との文言が遺言書に使われていても、その所有権移転の登記は「相続」を登記原因とします。
相続財産の全部について包括名義で贈与する旨の遺言があるときは、その遺言書に他の相続分の指定と解される記載がない限り、そその処分を受ける者が相続人の全員である場合には、その登記原因は相続とすべきである(昭和38年11月20日民事甲3119)。
(2) 相続人ではない人に「相続させる」と書かれた遺言書
遺言書に、相続人ではない人に「相続させる」と書かれている場合、「相続させる」とあるのを「遺贈する」と解釈することになります。よって、所有権の移転登記をする際の登記原因は「遺贈」となります。
この場合の登録免許税は、登記原因が遺贈の場合の原則どおり、固定資産評価額の1000分の20です。
(3) 相続人に「渡す」、「与える」などと書かれた遺言書
遺言の解釈にあたっては、「遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたっても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである」とされています(最高裁昭和58年3月18日判決)。
よって、「渡す」、「与える」、「やる」、「ゆずる(譲る)」などの文言が遺言書に使われていても、遺言による登記が可能であることについては問題ないと考えられます。
この場合の、登記原因については個々のケースにより判断されるべきものだと考えられますが、「渡す」というのは、原則として、遺贈の趣旨と解するのが相当であり、この他にも「与える」とした場合も同様に「遺贈」と解すべきとされています(登研880号111頁)。
「私のすべての財産は妻に渡す」旨の記載のある遺言書による所有権移転の登記原因は「遺贈」が相当である(登研512号158頁)。
なお、相続人に対して「管理させる」との文言が使用されている場合、相続、遺贈のどちらを原因とする所有権移転登記も受理されません。
「長女甲に管理させる」旨の遺言書を添付した「相続」を原因とする所有権移転登記の申請は受理できない。「遺贈」を原因とする移転登記の申請であっても同様(登研612号191頁)。
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