推定相続人の廃除とは

推定相続人の廃除とは、虐待、重大な侮辱その他の著しい非行がある遺留分を有する推定相続人について、家庭裁判所の審判により相続権を失わせる制度です。廃除の対象者、認められる要件、生前または遺言による手続、取消し、代襲相続、相続欠格・相続放棄との違いを解説します。

推定相続人の廃除とは – 相続・遺言の用語集

推定相続人の廃除は、廃除を求める人とその対象となる人との間に強い対立が生じることが多く、家庭裁判所の審判手続における対応が必要となります。そのため、推定相続人の廃除を検討している場合には、家庭裁判所の審判手続を代理できる弁護士へ相談することをおすすめします。


推定相続人の廃除とは

(最終更新日:2026年8月27日)

推定相続人の廃除とは、被相続人に対する虐待、重大な侮辱その他の著しい非行があった推定相続人について、家庭裁判所の審判により、その相続権を失わせる制度です。

廃除の対象となるのは、遺留分を有する推定相続人です。推定相続人とは、現時点で相続が開始した場合に相続人となる人をいいます。

推定相続人の廃除が認められると、その人は相続権と遺留分を失います。ただし、廃除は強い効果を生じさせる制度であるため、家庭裁判所へ申し立てれば容易に認められるものではありません。

1.推定相続人の廃除とは

2.廃除の対象となる相続人

3.推定相続人の廃除が認められる事由

3-1.被相続人に対する虐待

3-2.被相続人に対する重大な侮辱

3-3.その他の著しい非行

4.推定相続人を廃除する方法

4-1.被相続人が生前に申し立てる場合

4-2.遺言によって廃除する場合

5.廃除が認められた場合の効果

5-1.相続権と遺留分を失う

5-2.代襲相続が生じることがある

6.推定相続人の廃除の取消し

7.相続欠格・相続放棄との違い

8.推定相続人の廃除を検討している場合

1.推定相続人の廃除とは

推定相続人とは、ある人について現時点で相続が開始した場合に、相続人となる人のことです。

推定相続人の廃除は、遺留分を有する推定相続人に一定の事情がある場合に、被相続人の請求により、家庭裁判所の審判によってその相続権を失わせる制度です。

たとえば、子から継続的に暴力を受けているなどの事情があり、その子に自分の遺産を一切取得させたくない場合が考えられます。

遺言書によって特定の相続人には財産を相続させないと定めても、その相続人に遺留分があれば、相続開始後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

これに対し、推定相続人の廃除が認められると、その人は相続権そのものを失うため、遺留分も有しないことになります。

2.廃除の対象となる相続人

廃除の対象となるのは、遺留分を有する推定相続人です。具体的には、次の人が対象となる可能性があります。

  • 被相続人の配偶者
  • 被相続人の子またはその代襲相続人
  • 被相続人の直系尊属

兄弟姉妹や、兄弟姉妹の代襲相続人である甥・姪には遺留分がないため、推定相続人の廃除の対象にはなりません。

兄弟姉妹や甥・姪に財産を取得させたくない場合には、遺言書によって他の人へ財産を取得させる方法を検討します。

3.推定相続人の廃除が認められる事由

民法では、推定相続人の廃除を請求できる事由として、次の3つを定めています。

  • 推定相続人が被相続人を虐待したこと
  • 推定相続人が被相続人に重大な侮辱を加えたこと
  • 推定相続人にその他の著しい非行があったこと

3-1.被相続人に対する虐待

虐待には、被相続人に対する暴力などの身体的虐待だけでなく、状況によっては精神的虐待も含まれる可能性があります。

ただし、過去に一度だけ軽い暴力があったという事情だけで、当然に廃除が認められるわけではありません。行為の内容、回数、継続期間、被相続人が受けた被害などが総合的に考慮されます。

3-2.被相続人に対する重大な侮辱

重大な侮辱とは、被相続人の名誉や尊厳を著しく害する言動をいいます。

侮辱的な言葉を一度発したというだけではなく、その内容や程度、言動が繰り返されていたか、被相続人との関係にどのような影響を与えたかなどが判断の対象となります。

3-3.その他の著しい非行

その他の著しい非行には、虐待や重大な侮辱には直接該当しなくても、被相続人との家族関係を著しく破壊する行為が含まれることがあります。

たとえば、被相続人の財産を無断で処分した場合、長期間にわたり金銭を要求し続けた場合、重大な犯罪行為があった場合などには、その具体的な事情によって廃除事由に該当する可能性があります。

一方、親子や夫婦の仲が悪いこと、長期間疎遠であること、相続人が被相続人の期待どおりに行動しなかったことなどだけでは、通常、廃除が認められる理由にはなりません。

家庭裁判所では、問題となる行為の内容や継続性、その行為に至った経緯、被相続人側の事情などを踏まえ、家族関係を破壊し、その修復を著しく困難にするほどの行為であったかが審理されます。

4.推定相続人を廃除する方法

推定相続人の廃除には、被相続人が生前に家庭裁判所へ申し立てる方法と、遺言によって廃除の意思を表示する方法があります。

4-1.被相続人が生前に申し立てる場合

被相続人は、生前に家庭裁判所へ推定相続人の廃除を請求することができます。

廃除を請求できるのは被相続人本人です。他の推定相続人が、被相続人に代わって廃除を申し立てることはできません。

申立てでは、虐待、重大な侮辱その他の著しい非行があったことを具体的に主張し、それを裏付ける資料を提出します。

家庭裁判所は、被相続人と廃除の対象となっている推定相続人の双方から事情を聴くなどして、廃除事由があるかどうかを審理します。

4-2.遺言によって廃除する場合

被相続人は、遺言書に推定相続人を廃除する意思を記載することもできます。

遺言による廃除の場合、相続開始後、遺言執行者が家庭裁判所へ廃除を請求します。遺言執行者が定められていない場合には、家庭裁判所へ遺言執行者の選任を申し立てる必要があります。

遺言書に廃除すると記載しただけで、当然にその推定相続人が相続権を失うわけではありません。遺言執行者による申立てを経て、家庭裁判所に廃除を認めてもらう必要があります。

遺言による廃除が認められた場合、その効力は相続開始の時にさかのぼって生じます。

5.廃除が認められた場合の効果

5-1.相続権と遺留分を失う

廃除の審判が確定すると、廃除された人は、その被相続人について相続人となることができません。相続権を失うため、遺産分割協議に参加することもなく、遺留分侵害額請求をすることもできません。

ただし、廃除によって親子、夫婦その他の身分関係そのものが消滅するわけではありません。また、廃除の効力は廃除を請求した被相続人との相続関係について生じるものであり、他の人についての相続権まで失うものではありません。

5-2.代襲相続が生じることがある

被相続人の子が廃除された場合でも、その子に子がいれば、被相続人の孫が代襲相続人となることがあります。たとえば、被相続人の長男が廃除され、その長男に子がいる場合には、原則として、その子が長男に代わって被相続人を相続します。

そのため、特定の子だけでなく、その子の系統にも財産を取得させたくない場合には、廃除だけで目的を達成することはできません。代襲相続人にも遺留分があるため、遺言書を作成する場合でも遺留分に注意し、相続関係全体を確認したうえで対策を検討する必要があります。

・代襲相続について

6.推定相続人の廃除の取消し

被相続人は、廃除の審判が確定した後でも、家庭裁判所へ廃除の取消しを請求することができます。

廃除の原因となった事情が解消された場合や、被相続人と廃除された人との関係が修復された場合などには、廃除の取消しを検討することがあります。

被相続人は、遺言によって廃除を取り消す意思を表示することもできます。この場合には、相続開始後、遺言執行者が家庭裁判所へ廃除の取消しを請求します。

廃除の取消しについても、遺言書にその意思を記載しただけで直ちに効力が生じるわけではなく、家庭裁判所の審判が必要です。

7.相続欠格・相続放棄との違い

相続欠格とは、相続に関して故意に被相続人を死亡させた場合や、詐欺・強迫によって遺言を妨げた場合、遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合などに、法律上当然に相続資格を失う制度です。

推定相続人の廃除には家庭裁判所の審判が必要ですが、相続欠格は、法律で定められた欠格事由に該当すれば当然に相続資格を失う点が異なります。

また、相続放棄は、相続開始後に、相続人本人が家庭裁判所へ申述することによって、その相続を放棄する手続きです。

相続放棄をした人の子が代襲相続人になることはありません。これに対し、被相続人の子が廃除された場合には、その子の子が代襲相続人となることがあります。

8.推定相続人の廃除を検討している場合

推定相続人の廃除は、廃除を求める人とその対象となる人との間に強い対立があることが多く、家庭裁判所の審判手続では、双方の主張や提出された証拠などをもとに、廃除事由があるかどうかが審理されます。

このように、推定相続人の廃除は当事者間の対立を伴うことが多いため、申立てを検討している場合には、家庭裁判所の審判手続を代理できる弁護士へ相談することをおすすめします。

上記のような事情から、高島司法書士事務所では、推定相続人の廃除に関する申立書その他の家庭裁判所提出書類の作成についてご相談があった場合には、原則として弁護士への相談をおすすめしています。

なお、廃除の審判がすでに確定しており、廃除後の相続関係に基づく相続登記が必要な場合には、当事務所へご相談いただけます。

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