夫の遺産を全て妻が相続するには(子の相続放棄?) | 千葉県松戸市の高島司法書士事務所

夫の遺産を妻がすべて取得するには、子ども全員が相続放棄をすればよいのでしょうか。後順位の相続人への影響、遺産分割協議との違い、相続債務に関する注意点を解説します。

夫の遺産をすべて妻が相続するには(子の相続放棄?)

被相続人の子ども全員が相続放棄をすると、父母や祖父母などの直系尊属がいる場合には、そのうち被相続人に最も親等の近い直系尊属が相続人となります。

直系尊属がすでに死亡している場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となり、兄弟姉妹が被相続人より先に死亡しているときは、その子である甥・姪が代襲相続人となることもあります。

たとえば、「妻が夫の遺産をすべて相続できるようにするため、子ども全員が相続放棄をしたところ、亡夫の兄弟姉妹や甥・姪が新たに相続人となってしまった」ということが実際に起こり得ます。

このような事態を避けるため、妻が夫の遺産をすべて取得することを希望する場合には、子ども全員が相続放棄をするのではなく、妻と子ども全員で遺産分割協議を行うのが通常です。

遺産分割協議において、妻が夫の遺産をすべて取得することに相続人全員が合意すれば、子どもが相続放棄をしなくても目的を達成できます。

ただし、遺産分割協議によって妻が遺産をすべて取得することとしても、それだけで子どもが夫の債務を免れるわけではありません。夫に債務がある場合には、相続放棄を検討すべきこともあるため、注意が必要です。

また、相続放棄をすると、その相続について初めから相続人でなかったものとみなされ、原則として撤回することもできません。

想定外の人が相続人となるのを避けるためにも、手続きを進める前に相続人の範囲や債務の有無を十分に確認し、判断に迷う場合には専門家へ相談することをおすすめします。


この記事では、相続放棄や遺産分割協議の基本的な考え方について解説していますが、上記のような想定外の事態を防ぐためには、相続手続きを進める前に専門家へ相談することが大切です。


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子が相続放棄すれば配偶者がすべて相続できるのか

(最終更新日:2026年8月18日)

夫が亡くなり、その相続人が妻と3人の子であるケースを考えます。夫の父母や祖父母などの直系尊属および兄弟姉妹はすでに全員死亡していますが、兄弟姉妹には子(夫の甥・姪)がいるものとします。

子ども3人はいずれも、妻が夫の遺産をすべて取得することに同意しています。

このような場合、「妻が夫の遺産をすべて相続するためには、子ども3人全員が相続放棄をすればよいのか」というご質問をいただくことがあります。

子が相続放棄すれば配偶者が全て相続できるのか

まず、子どもたちが相続放棄をしない場合の相続関係を確認します。

このケースでは、被相続人である夫の配偶者と子ども3人の合計4人が相続人となり、その法定相続分は次のとおりです。

  • 妻:2分の1
  • 子ども:それぞれ6分の1(子ども全体で2分の1)

それでは、妻が夫の遺産をすべて取得するために、子ども全員が相続放棄をする方法は適切なのでしょうか。以下、このケースをもとに解説します。


子が相続放棄すれば配偶者が全て相続できるのか(目次)
1.子が相続放棄すると誰が相続人になるのか
2.妻と子全員で遺産分割協議をするのが通常です
3.一部の子だけが相続放棄した場合
4.まとめ(妻が夫の遺産をすべて取得するために)


1.子が相続放棄すると誰が相続人になるのか

相続放棄は、家庭裁判所に申述をして行う手続きです。相続放棄の申述が受理されると、相続放棄をした人は、その相続について「初めから相続人とならなかったもの」とみなされます。

今回のケースでいえば、子ども3人全員が相続放棄をすると、その3人は、父の相続について初めから相続人とならなかったものとみなされます。

ただし、子ども全員が相続放棄をしても、妻が必ず夫の遺産をすべて相続できるとは限りません。

被相続人の子ども全員が相続放棄をすると、父母や祖父母などの直系尊属がいる場合には、そのうち被相続人に最も親等の近い直系尊属が相続人となります。

直系尊属がいない場合には、兄弟姉妹が相続人となり、夫より先に死亡した兄弟姉妹に子がいるときは、その子である甥・姪が代襲相続人となります。

今回のケースでは、夫の父母や祖父母などの直系尊属および兄弟姉妹はすでに全員死亡していますが、夫より先に死亡した兄弟姉妹に子(夫の甥・姪)がいます。

そのため、子ども3人全員が相続放棄をすると、妻と甥・姪が共同相続人となります。

たとえば、下図のように、子ども3人が相続放棄をしたことで、夫より先に死亡した兄の子(夫の甥)が相続人となることがあります。

妻が夫の遺産をすべて相続することを目的として子ども全員が相続放棄をしたにもかかわらず、かえって当初想定していなかった甥・姪などが相続人となってしまうことがあるのです。

そのため、子ども全員が相続放棄をする場合には、後順位の相続人がいるかどうかを事前に確認することが重要です。

子の全員が相続放棄したことで甥(姪)が相続人に

なお、夫の死亡時に、父母や祖父母などの直系尊属および兄弟姉妹がすでに全員死亡しており、兄弟姉妹に代襲相続人となる子(夫の甥・姪)もいない場合には、子ども全員が相続放棄をすることで、妻が単独の相続人となります。その結果、妻が夫の遺産をすべて相続することになります。

2.妻と子全員で遺産分割協議をするのが通常です

今回のケースのように、妻と子が相続人であり、妻が夫の遺産をすべて取得することについて全員が合意している場合には、子どもが相続放棄をするのではなく、妻と子全員で遺産分割協議を行うのが通常です。


遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、被相続人の遺産を誰がどのように取得するかについて、相続人全員の話し合いによって決める手続きです。

遺産分割協議を成立させるためには、すべての相続人が参加し、その内容について全員が合意する必要があります。

今回のケースであれば、妻と子ども3人が合意することにより、「妻が夫の遺産をすべて取得する」という内容の遺産分割協議を成立させることができます。


遺産分割協議書の作成

遺産分割協議は相続人全員の合意によって成立しますが、合意した内容を明確にし、その後の相続手続きに使用するため、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書には、不動産や預貯金などの遺産を特定したうえで、それらを妻が取得する旨を記載します。

相続登記や預貯金の相続手続きに使用する遺産分割協議書には、通常、相続人全員が署名または記名し、実印を押印します。また、それぞれの印鑑証明書も用意します。

この遺産分割協議書を使用することで、妻が不動産について相続登記を申請したり、預貯金の解約や払戻しを受けたりすることができます。

妻が夫の遺産をすべて取得することに相続人全員が合意しているのであれば、そのために子どもが相続放棄をする必要はありません。


債務を引き継ぎたくない場合

相続放棄は、被相続人に多額の債務がある場合だけに行うものではありません。ただし、被相続人の債務を一切引き継ぎたくない場合には、相続放棄を検討する必要があります。

遺産分割協議により、妻が夫の遺産をすべて取得し、債務についても妻が負担すると定めたとしても、その合意だけで、子どもが債権者に対する支払い義務を免れるわけではありません。

債権者の承諾がない限り、子どもは原則として、法定相続分に応じた相続債務の支払い義務を負います。

したがって、子どもが夫の債務を一切引き継ぎたくない場合には、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う必要があります。

ただし、相続放棄をすると、債務だけでなく、不動産や預貯金などのプラスの財産についても相続できなくなります。


相続放棄をした子の子(孫)への影響

相続放棄をした子に子(被相続人の孫)がいたとしても、その相続放棄によって孫が代襲相続人となることはありません。

孫が子に代わって相続人となるのは、次のいずれかに該当する場合です。

  • 子が被相続人より先に死亡している場合
  • 子が相続欠格に該当し、相続権を失った場合
  • 子が相続人の廃除によって相続権を失った場合

相続放棄は、これらのいずれにも該当しません。

したがって、子が相続放棄をしても、その子である孫が代わって相続人となることはありません。

3.一部の子だけが相続放棄した場合

子が複数いる場合、各子はそれぞれ相続放棄をするかどうかを判断できるため、一部の子だけが相続放棄をすることも可能です。

たとえば、子が3人いるケースで、そのうち2人だけが相続放棄をした場合、相続人となるのは、妻と相続放棄をしなかった1人の子です。

この場合の法定相続分は、次のとおりです。

  • 妻:2分の1
  • 相続放棄をしなかった子:2分の1

子のうち少なくとも1人が相続人として残っているため、後順位に当たる被相続人の兄弟姉妹や甥・姪が相続人となることはありません。


一部の子だけが相続放棄するケース

被相続人に不動産や預貯金などの財産がある一方で、借金などの債務もある場合、一部の子だけが相続放棄をすることがあります。

たとえば、子ども3人のうち、長男を除く2人が相続放棄をすれば、相続人となるのは妻と長男です。相続放棄をした2人は、被相続人の財産を取得できなくなる一方、原則として被相続人の債務も引き継ぎません。

相続放棄をする際、財産は相続するが債務は相続しないという選択はできません。相続放棄をすると、プラスの財産とマイナスの財産のいずれも引き継がないことになります。

また、相続放棄をしなかった長男の法定相続分は、子ども3人が相続人であったときの6分の1から2分の1になります。これに伴い、相続債務についても、原則として2分の1に相当する支払い義務を負うことになります。

したがって、一部の子だけが相続放棄をする場合には、相続放棄をしなかった子の財産だけでなく、債務の負担も大きくなる可能性があることに注意が必要です。

子の一部が相続放棄する方法もあります


妻が遺産をすべて取得するには遺産分割協議が必要です

子ども3人のうち2人が相続放棄をしても、それだけで妻が夫の遺産をすべて取得できるわけではありません。相続放棄をしなかった子も相続人として残るからです。

妻が夫の遺産をすべて取得するためには、妻と相続放棄をしなかった子との間で、「妻が夫の遺産をすべて取得する」という内容の遺産分割協議を成立させる必要があります。相続放棄をした子は、初めから相続人とならなかったものとみなされるため、この遺産分割協議に参加する必要はありません。

ただし、妻が遺産をすべて取得するとの遺産分割協議を成立させても、相続放棄をしなかった子が、債権者に対する相続債務の支払い義務を当然に免れるわけではありません。

相続放棄をしなかった子は、原則として、その法定相続分に応じた相続債務の支払い義務を負います。遺産分割協議で妻が債務のすべてを負担すると定めた場合でも、子が債権者との関係で支払い義務を免れるためには、債権者の承諾が必要です。


相続放棄・遺産分割の判断に迷ったら

相続人の一部または全員が相続放棄をすべきかどうかは、被相続人の財産や債務の内容、相続人の範囲、家族関係などを総合的に検討して判断する必要があります。

また、相続放棄は、原則として自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所へ申述しなければなりません。

子ども全員が相続放棄をすると後順位者が新たに相続人となる可能性がある一方、一部の子だけが相続放棄すると、相続放棄をしなかった子の相続分や債務の負担が大きくなることがあります。

想定していなかった結果を避けるためにも、相続放棄と遺産分割協議のどちらを選択すべきか判断に迷う場合には、手続きをする前に専門家へ相談することをおすすめします。

4.まとめ(妻が夫の遺産をすべて取得するために)

夫が亡くなったときに、「妻が夫の遺産をすべて取得することにしたい」というご相談は多くあります。

しかし、その方法を誤ると、子ども全員が相続放棄をした結果、当初想定していなかった兄弟姉妹や甥・姪などが新たに相続人となることがあります。

妻が夫の遺産をすべて取得するためには、相続人の範囲や夫の債務の有無を確認したうえで、遺産分割協議と相続放棄のどちらが適切であるかを検討する必要があります。

遺産分割協議と相続放棄の比較

方法内容注意点
遺産分割協議を行う妻と子全員で、妻が夫の遺産をすべて取得する旨の協議を成立させ、遺産分割協議書を作成する。通常はこの方法によります。ただし、子は相続債務の支払い義務を当然には免れません。
一部の子だけが相続放棄する一部の子が家庭裁判所で相続放棄をし、妻と相続放棄をしなかった子が相続人となる。妻が遺産をすべて取得するには、残った子との遺産分割協議が必要です。また、残った子の相続分や債務の負担が大きくなります。
子全員が相続放棄する子全員が家庭裁判所で相続放棄をし、妻は引き続き相続人となる。後順位の相続人がいれば、その人と妻が共同相続人となります。後順位の相続人がいない場合には、妻が単独の相続人となります。

相続放棄と遺産分割協議の違い

相続放棄と遺産分割協議は、法的な効果が異なります。

  • 相続放棄:家庭裁判所で相続放棄の申述を行うことにより、その相続について初めから相続人とならなかったものとみなされます。
  • 遺産分割協議:相続人全員の合意により、被相続人の遺産を誰がどのように取得するかを決める手続きです。

夫に債務がなく、子ども全員が妻による遺産全部の取得に同意している場合には、通常、妻と子全員で遺産分割協議を行います。

一方、子どもが夫の債務を一切引き継ぎたくない場合には、相続放棄を検討する必要があります。ただし、子ども全員が相続放棄をすると、後順位の相続人が新たに相続人となる可能性があるため、事前に相続人の範囲を確認することが重要です。


専門家に相談するメリット

相続放棄や遺産分割協議の法的な効果を十分に理解しないまま手続きを進めると、当初想定していなかった人が相続人となったり、引き継がないつもりだった債務の支払いを求められたりするおそれがあります。

早い段階で専門家に相談することで、誰が相続人となるのか、相続放棄をすると誰が新たに相続人となる可能性があるのか、どのような手続きを検討すべきかを確認できます。

また、手続きを依頼する場合に必要となる書類や費用についても、事前に確認することができます。


相続のご相談は松戸駅徒歩1分の高島司法書士事務所へ
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相続放棄の管轄裁判所(全国の家庭裁判所に対応)

相続放棄の手続きを行うには、家庭裁判所へ相続放棄申述書および必要な添付書類を提出する必要があります。

相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

被相続人とは、亡くなられた方のことです。相続放棄をする方(申述人)の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きをすることはできませんので、ご注意ください。

たとえば、被相続人の最後の住所地が次の地域にある場合、相続放棄の管轄裁判所は次のとおりです。

  • 千葉県松戸市・柏市・流山市・我孫子市・鎌ケ谷市・野田市 → 千葉家庭裁判所松戸支部
  • 千葉県市川市・船橋市 → 千葉家庭裁判所市川出張所
  • 東京23区 → 東京家庭裁判所(東京都千代田区霞が関)

郵送による申述が可能です(全国対応)

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松戸の高島司法書士事務所では、2002年の事務所開業以来、相続放棄申述書の作成を多数取り扱っております。千葉家庭裁判所松戸支部への相続放棄はもちろん、全国の家庭裁判所に対する相続放棄の申述にも対応しています。

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