遺言書の条項例 その3(負担、特別受益、遺留分減殺)
自らの思いを確実に実現させるためには、遺言書にどのような記載をするのが良いのか、基本的な条項例(文例、記載例)について解説します。
目次 遺言書の条項例 その3(負担、特別受益、遺留分減殺)
8.負担付の遺言
8-1.扶養義務を負担させる遺言
8-2.債務の承継を負担とする遺言
8-3.ペットの飼育を負担とする負担付遺贈
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1.全ての財産を相続させる遺言
2.特定の財産を相続させる遺言
2-1.特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言
(1) 土地を相続させる場合
(2) 建物を相続させる場合
(3) 銀行預金を相続させる場合
2-2.全ての財産を特定の相続人に相続させる遺言
2-3.一部の財産を特定の相続人に相続させる遺言
3.割合を定めて相続させる遺言
4.相続人でない人に財産を残すための遺言(遺贈)
5.遺産分割の方法を指定する遺言(清算分配)
5-1.全ての財産を換価し清算する場合
5-1.一部の財産を換価し清算する場合
6.予備的遺言
7.遺言執行者の指定
8.負担付の遺言
負担付遺贈とは、遺贈をするにあたって、法律上の一定の義務を受遺者へ負わせることをいいます(民法1002条)。この規定は、相続させる旨の遺言にも準用されます。
負担付遺贈では、財産を遺贈する代わりに、特定の誰かを世話(扶養)する義務を負わせるほか、ペットの飼育を負担させるようなことも可能です。
また、遺産を相続させる代わりに、遺言者の債務を引き継がせる遺言をするケースもあります(ただし、それによって他の相続人が債務支払義務を逃れることはできません)。
負担付遺贈を受けた人は、それを承認するか放棄するかを選択することができます。ただし、遺贈と負担はセットになっていますから、遺贈を承認するならば負担も必ず引き継ぎます。
8-1.扶養義務を負担させる遺言
遺言者およびその妻と同居している長男へ不動産を相続させる代わりに、遺言者の死後もその妻と同居し扶養するとの負担をさせる遺言です。
扶養義務を負うのが不動産を相続するに当たっての条件です。したがって、不動産は相続するが、扶養義務は負わないとの選択はできないわけです。
第○条 遺言者は、遺言書の有する下記の土地を長男○○に相続させる。
(不動産の表示 省略)
第○条 長男○○は前○条の財産を相続することの負担として、妻○○が死亡するまで同人と同居し、扶養すること。
8-2.債務の承継を負担とする遺言
特定の相続人が債務を負担することを、遺言により次のように定めることもできます。このような定めも相続人間では有効ですが、それを債権者に主張することはできません。
特定の相続人のみに債務を負担させる遺言があったとしても、相続債務についての債権者は、各相続人に対してその法定相続分の支払いを求めることが可能なのです。
相続人が相続債務の支払い義務から完全に逃れるためには、家庭裁判所で相続放棄の手続きをするほかに方法はありません。相続放棄をした人は、その相続については最初から相続人でなかったものとみなされますから、相続債務を負担することもなくなるのです。
第○条 長男○○は前○条の財産を相続することの負担として、遺言者の債務一切を負担、承継するものとする。
8-3.ペットの飼育を負担とする負担付遺贈
ペットを飼育してくれることを条件に遺贈をおこなう遺言です。遺言者よりも先に、ペットが死亡してしまった場合には、遺贈をする意味がなくなるので、そのときには遺贈しないものとしています。
第○条 遺言者は、遺言者の飼い犬○○と、遺言者の有する預貯金のうち金50万円とを、○○○○(昭和○年○月○日生、住所 千葉県松戸市松戸1丁目1005番地)に、上記飼い犬を終生飼育することを条件にして、遺贈する。
2 遺言者の飼い犬○○が、遺言者よりも先に死亡した場合には、前項記載の遺贈はおこなわないものとする。
9.特別受益に関する意思表示(持戻免除)
被相続人(遺言者)が特別受益についての規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有するとされています(民法903条3項)。
遺言者は、遺留分を侵害しない範囲内であれば、各相続人の相続分を指定することができます。特別受益に該当する贈与分も含めて、次のように持戻免除の意思表示もできるわけです。
第○条 遺言者は、長女○○に対し300万円を贈与してあるところ、同女は離婚し、幼子を養育し、家計が苦しい状況であることを考慮して、相続分は上記贈与がなかったものとして算定すべきものとする。
10.遺留分減殺請求についての別段の意思表示
遺留分を侵害するような相続をさせる遺言をすることも可能です。ほかの相続人から異議が出なければ、それでも全く問題ないわけです。
また、遺留分を侵害するような遺言をする場合には、遺留分権利者に対して遺留分減殺請求権を行使しないよう求めることも考えられます。しかし、このような求めは付言事項にとどまり、法的な拘束力はありません。
第○条 遺言者は、遺留分権利者が遺留分減殺請求権を行使しないことを求める。
ほかの相続人から異議が出るおそれがあるときには、上記のような記載に加え、なぜ一部の相続人に多くの相続をさせようとするのか理由を示しておくのも一つの方法です。遺言者の真意を伝えることにより相続人全員の納得が得られれば、遺言者の意思にしたがった相続が実現できることもあるでしょう。
それでも、一部の相続人から遺留分減殺請求をされるのが避けられないと考える場合には、あらかじめ遺言の中で遺留分減殺請求の順序を定めておくことも考えられます。
第○条 遺言者は、遺留分の減殺について、まず第○条掲記の現金、預貯金からすべきものと定める。
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