コクヨ「遺言書キット」のレビュー
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(記事公開日:2011年8月5日)
近年、遺産相続手続きへの関心が高まっていることにより、遺言書の作成について解説する書籍も数多く販売されています。
自分一人で遺言書を書きたい方に向けた、遺言書用紙と解説書をセットにしたものもあります。今回はコクヨから発売されている「遺言書キット」を、遺言や相続手続きの専門家である司法書士の視点でレビューしました。
この遺言書キットで作成できるのは自筆証書遺言です。そもそも、自筆証書遺言は紙とペンがあれば作成できるのであり、このようなキットを購入しなくても差し支えはありません。しかし、遺言書キットを利用しその解説どおりに書いた方が、法的に有効な遺言書が作成できる可能性は高まるといえるでしょう。
ただし、遺言書が効力を生じるときになって不備が発覚しても、それを訂正することは不可能です。遺言書が効力を生じるのは、相続の開始後だからです。したがって、たとえ遺言書キットを利用したとしても、本当に「法的に有効」であるかは、やはり専門家に確認してもらうことをお勧めします。
なお、法的に間違いのない自筆証書遺言を作成したとしても、紛失してしまえば無意味です。また、自筆証書遺言は、相続が開始した後に家庭裁判所での遺言検認手続きを受ける必要もあります(もちろん、遺言書キットを使っても検認は必要です)。
そこで、遺言書を作る際には、公正証書遺言によるのがベストであることも申し添えておきます(公正証書遺言の作成についてはこちら)
遺言書キットの内容
さて、このコクヨ「遺言書キット」の内容は次のとおりです(写真は手元にあったiPod touchで撮影したため、あまりキレイに撮れませんでしたがご容赦ください)。
1.遺言書・虎の巻:1冊
遺言書の書き方のついての解説書です(50ページ)。
事例として、「夫婦2人暮らしの場合」、「夫婦と小さな子供2人の場合」、「定年した夫婦と成人の子3人の場合」を挙げて、それぞれの場合にどんな遺言書を書くべきかを解説しています。
どのケースでも、遺言に記載しているのは、「銀行預金、有価証券、自宅不動産などを法定相続人のうちの誰に相続させるか」と、それから「遺言執行者を誰にするのか」という程度です。
その後の解説の中には、「相続人以外の第三者に遺贈する場合」、「子供のために未成年後見人を指定する場合」などの書き方も書いてありますが、この解説書のみでこれらの事項について遺言書に記載するのは無理があります。
そもそも、遺言書用紙をご覧いただいてもお分かりいただけるとおり、この遺言書キットでは、ごくシンプルな遺言書のみを想定していると思われます。よって、この遺言書キットを利用することで、自分一人で遺言書を作成して問題無いのは、「銀行預金やマイホームを家族の誰に相続させるか」だけが指定できれば良いというような場合に限定されるでしょう。
2.遺言書用紙:4枚
遺言書の清書用の用紙です。上質で書きやすそうな紙質です。2枚以上に渡る場合の処理方法(ホチキスで留めてページ番号を書く。割印をする)も書いてありますが、基本的には1枚に収まる程度のボリュームを前提に作られています。
3.遺言書下書き用紙:2枚
遺言書用紙と形式は同じですが、用紙左上に「下書き用」と大きく書かれており、紙質も異なります。なお、下書き用紙で遺言書を書いてしまたっとしても、必ずしも無効とはいえないでしょうが、遺言者の意思を推認するにあたって問題が生じるかもしれません。
4.保管用台紙:1枚
二つ折りになっており、中に遺言書を挟み込めます。厚手のしっかりした台紙なので、長期保管に適しているでしょう。
5.封印用封筒:1枚
「開封すると元に戻せない特殊な封筒」だとのことです。テープをはがして封を出来るようになっていますが、開封すると「無効」などの文字が浮かび上がるのでしょうか?ただし、開封すると元に戻せないとはいっても、開封したことによって遺言書が無効になるわけではないのは当然です。
ただし、相続開始後に遺言書を開封するのは、家庭裁判所での検認手続きのときです。裁判所に行く前に開封してしまわないように注意が必要です。
遺言書キットについての結論
結論としては、この遺言書キットにより一人で遺言書を書けるのは、マイホーム以外の財産は、銀行預金と多少の有価証券(株式、投資信託など)がある程度だという方でしょう。
上記に当てはまる方は、まずはこのコクヨ「遺言書キット」を購入し、記載されている文例がそのまま利用できるのであれば、お一人で遺言書を作成しても差し支えないと思われます(それでも、封をする前に専門家に内容を確認してもらった方が安心です)。
また、遺言書キットの文例だけでは、ご自身が遺言したいことに足りない場合には、そもそも、自分1人で遺言書を作成すべきケースではないともいえます。そのような場合には、弁護士、司法書士などのサポートを受けて、遺言書を作成した方が間違いないと思われます。
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関連情報
遺言書の作成(千葉県松戸市の高島司法書士事務所ウェブサイト)
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