相続人が相続放棄する前に死亡したとき(再転相続)
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相続人が相続放棄する前に死亡したとき(再転相続)
(最終更新日:2026年10月28日)
(ご相談の例)
令和8年1月に伯父(甲)が亡くなり、その相続人となった父(乙)も、同年3月に亡くなりました。父は、伯父の相続について承認も放棄もしないまま亡くなっています。
私(丙)は、父が亡くなって自分が父の相続人になったことは知っていましたが、伯父が亡くなっていたことは知りませんでした。
令和8年5月1日になって、伯父が亡くなっていたことと、伯父に多額の借金があったことを知りました。このとき初めて、父の相続を通じて、自分が伯父の相続人としての地位も引き継いでいたことが分かりました。
父の財産は相続したいのですが、伯父が亡くなってから3か月を過ぎていても、伯父の相続だけを放棄することはできるのでしょうか。

(ご回答)
父が伯父の相続について承認・放棄を選べる状態のまま亡くなり、丙が父の相続を放棄していなければ、伯父の相続だけを放棄することができます。
この事例では、原則として、父から伯父の相続人としての地位を引き継いだことを知った令和8年5月1日から3か月以内に、伯父の相続について家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。
1.再転相続とは
相続が開始した後、その相続について承認・放棄を選べる状態のまま相続人が亡くなり、その方の相続人が地位を引き継ぐ場合を「再転相続」といいます。
上記の事例では、伯父(甲)の相続人である父(乙)が、伯父の相続について承認も放棄もしないまま亡くなっています。そのため、父の相続人である私(丙)は、父自身の財産や債務だけでなく、伯父の相続について承認するか放棄するかを選択できる地位も引き継ぎます。
ここでは、伯父の相続を「第一次相続」、父の相続を「第二次相続」として区別します。
ただし、父がすでに伯父の相続を単純承認していた場合は異なります。熟慮期間の経過等により単純承認したものとみなされる場合も含め、父の死亡によって、伯父の相続を放棄する機会が改めて与えられるわけではありません。
2.再転相続の相続放棄は、いつから3か月以内か
相続について承認するか放棄するかを判断するための期間を「熟慮期間」といいます。
再転相続の場合の熟慮期間については、民法916条に定めがあります。この条文の解釈を示したのが、最高裁令和元年8月9日判決です。
この判決によると、第一次相続の熟慮期間は、第二次相続により、第一次相続の相続人としての地位を自分が引き継いだことを知った時から起算します。
上記の事例に当てはめると、私(丙)が、父(乙)から伯父(甲)の相続人としての地位を引き継いだことを知った時が基準となります。
したがって、伯父が亡くなった令和8年1月や、父が亡くなった同年3月から一律に数えるのではなく、その事実を初めて知った同年5月1日から、原則として3か月以内に伯父の相続放棄をすればよいことになります。
なお、民法916条は、父自身が伯父の相続人になったことを知らないまま亡くなった場合にも適用されます。
父の相続についての熟慮期間とは区別します
伯父の相続と父の相続では、熟慮期間の起算点が異なることがあります。
父の相続については、原則として、父が亡くなり、自分が父の相続人になったことを知った時から3か月です。後になって伯父の相続人としての地位を引き継いだことが分かっても、それだけで父の相続についての熟慮期間が改めて始まるわけではありません。
一方、父の相続についての熟慮期間が過ぎていても、伯父の相続については、まだ相続放棄ができる場合があります。それぞれの相続について、いつ、どのような事実を知ったのかを確認することが大切です。
3.伯父と父、それぞれの相続について承認・放棄を選択できます
| 伯父(甲)の相続 | 父(乙)の相続 | 選択の可否 |
| 放棄 | 承認 | できる |
| 承認 | 承認 | できる |
| 放棄 | 放棄 | できる(手続きの順序に注意) |
| 承認 | 放棄 | できない |
伯父の相続だけを放棄し、父の財産を相続する場合
父の相続を承認し、伯父の相続だけを放棄することができます。父の相続を承認したからといって、当然に伯父の相続まで承認したことになるわけではありません。
この場合は、伯父の相続について相続放棄の申述をします。申述書や事情を説明する書面では、父を通じて再転相続人となった経緯と、放棄する対象が伯父の相続であることを明確にします。
父の相続を先に放棄する場合
父の相続を放棄すると、初めから父の相続人ではなかったものとみなされます。そのため、父が有していた、伯父の相続について承認・放棄を選択する地位も引き継がなくなります。
この事例では、父の相続放棄をすれば、父を通じて伯父の借金を相続することもなくなるため、別に伯父の相続放棄をする必要はありません。
また、父の相続を放棄しながら、父から引き継ぐはずだった地位を利用して伯父の相続だけを承認することはできません。
伯父の相続を放棄した後、父の相続も放棄する場合
先に伯父の相続を放棄した後でも、父の相続について熟慮期間内であり、単純承認をしたとみなされる事情等がなければ、父の相続も放棄することができます。
後から父の相続を放棄しても、先にした伯父の相続放棄がさかのぼって無効になることはありません(最高裁昭和63年6月21日判決)。
たとえば、まず伯父の借金を理由に相続放棄をし、その後の調査で父にも多額の借金があると分かった場合には、父の相続放棄を別途検討することになります。
4.相続財産がないと信じていた場合
再転相続人としての地位を引き継いだことを知っていても、相続放棄の熟慮期間について、例外が認められる場合があります。
東京地裁令和元年9月5日判決では、第一次相続の被相続人に相続財産が全くないと信じていたために相続放棄をせず、そのように信じたことに相当な理由がある場合について判断が示されています。
このような場合には、相続財産の全部又は一部の存在を認識した時、または通常これを認識し得た時から熟慮期間を起算することが認められる場合があります。
ただし、借金を後から知ったというだけで、必ずその時から3か月になるわけではありません。 相続財産がないと考えていた理由や、被相続人との交流状況など、個別の事情を確認する必要があります。
5.再転相続の相続放棄についてのご相談
再転相続では、どちらの相続を放棄するのか、それぞれの熟慮期間がいつから始まるのかを整理することが大切です。
債権者から通知を受けて初めて事情を知った場合には、その通知書や封筒など、知った時期や経緯を確認できる資料も保管しておいてください。
高島司法書士事務所では、再転相続が生じた場合の相続放棄についてもご相談を承っています。亡くなってから3か月が過ぎている場合も、ご自身だけで判断せず、お早めにご相談ください。ご相談は予約制ですので、ご相談予約・お問い合わせのページから事前にご連絡ください。
相続放棄の管轄裁判所(全国の裁判所に対応します)
相続放棄の申述受理申立は、相続開始地(被相続人の最後の住所)を管轄する家庭裁判所へおこないます(相続放棄をする方が住んでいる場所ではありません)。
たとえば、相続開始地が千葉県松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市の場合には千葉家庭裁判所松戸支部、市川市、船橋市なら千葉家庭裁判所市川出張所、東京23区内であれば東京家庭裁判所(霞ヶ関)です。
ただし、家庭裁判所への相続放棄申述受理の申立ては郵送によりおこなうこともできます。当事務所では、多数の相続放棄を取扱い豊富な経験と実績がありますから、郵送による手続きでも全く問題ありません。
したがって、全国どこの裁判所への申立であっても、松戸の高島司法書士事務所へご依頼いただくことが可能ですし、遠方だからといって追加費用がかかることもありません(ただし、ご依頼いただく際には、面談によるご相談が原則として必要です)。
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