被相続人の最後の住所が登記簿と違う場合(住所変更の要否)
(最終更新日:2025/09/05)
(2025年9月5日追記 住所・氏名などの変更登記が義務化)
令和8年4月1日から、不動産の所有者は住所移転や氏名変更があったときから2年以内に、登記名義人住所(氏名)変更の登記をすることが義務付けられます。ただし、「検索用情報の申出」をしておくことで登記申請義務違反に問われることはなく、さらに自分で登記申請をしなくても、法務局が職権で住所等変更登記をしてくれるようになります(詳しくは、法務省の「住所等変更登記の義務化特設ページ」で解説されています)。
この住所変更等の登記義務化により、将来的には「被相続人の最後の住所が登記簿と異なる」ケースは減少していくと考えられます。しかし、登記上の住所や氏名の不一致が完全に解消されるまでには、なお相当の時間を要するでしょう。
不動産の登記事項証明書には、所有者の住所および氏名が記載されています。しかし、この登記されている住所・氏名は、所有者が引っ越して住民票を移したり、結婚により氏が変わったとしても、自動的に書き換わることはありません。
登記されている住所・氏名を変更するには、司法書士に依頼して(または所有者自身が法務局へ行って)、登記名義人住所・氏名変更の登記をする必要があります。しかし、そのような知識がないために手続きをせず放置されているケースも多く、登記されている住所・氏名が古いままになっていることも少なくありません。
そこで、売買・贈与などを原因とする所有権移転登記を行うときには、現在の所有者(売主・贈与者)の現住所や氏名が登記事項証明書の記載と異なる場合、所有権移転登記をする前に「所有権登記名義人住所・氏名変更」の登記をする必要があります。
それでは、売買や贈与による所有権移転登記ではなく、相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)をするときに、不動産の所有者である被相続人の最後の住所と登記記録上の住所とが異なる場合はどうでしょうか?
1.被相続人の最後の住所と、登記簿上の住所が異なる場合
結論からいえば、相続登記においては「被相続人の最後の住所」と「登記事項証明書に記載された住所」が異なる場合であっても、事前に登記名義人住所変更の登記を行う必要はありません(被相続人の氏名が変更されている場合も同様に、登記名義人氏名変更の登記は不要です)。
ただし、被相続人がその不動産の所有者であることを証明するために、「登記事項証明書に記載された住所」と「被相続人の最後の住所」とのつながりを示す住民票除票、戸籍(除籍・改製原戸籍)の附票などを、相続登記の申請時に提出する必要があります。
具体的には、住民票除票や戸籍の附票などに記載された前住所が登記事項証明書の住所と一致すれば、その他の書類は不要です。登記事項証明書に記載されている住所がさらに以前のものである場合は、追加で戸籍(除籍・改製原戸籍)の附票などを取得する必要があります。
また、取得した住民票除票や除籍の附票に登記記録上の住所の記載がない場合であっても、登記記録上の住所と被相続人の本籍が一致する場合には、被相続人と登記簿上の所有者が同一であることが認められます。この本籍は被相続人の最後の本籍である必要はなく、過去の一時期に存在した本籍でも差し支えありません。
それでも登記記録上の住所が記載された書類を取得できない場合には、被相続人についての不在住証明、不動産の登記済証(権利証)、相続人による上申書などを提出するのが登記実務上の取扱いです。
登記事項証明書に記載されている住所がかなり以前のものである場合には、不動産登記の専門家である司法書士であっても手続に苦労することがあります。したがって、相続人が自分で手続きを行うのは困難な場合が多いと考えられるため、司法書士に相談することを強くおすすめします。
2.除住民票、戸籍附票などが廃棄されている場合
住民票は除票となってから、戸籍附票は除籍されてから、それぞれ保存期間は5年とされていました。現在では、平成26年(2014年)6月20日以降に消除または改製された住民票の除票および戸籍附票の除票の保存期間は150年となっています。しかし、長期間にわたって相続登記がされていなかった不動産では、被相続人の住民票除票や除籍の附票などを取得できない場合があります。
住所を証明するために利用できる書類は、住民票(除票)、戸籍(除籍・改製原戸籍)の附票に限られます。そのため、登記記録上の住所と被相続人の最後の住所とのつながりを証明できる書類が取得できないこともあります。
この場合でも、登記記録上の住所と被相続人の本籍が一致する場合には、被相続人と登記簿上の所有者が同一人物であることが認められます。ただし、本籍と住所が異なるケースも多いため、本籍によっても被相続人の同一性を証明できないこともあります。
住民票除票、戸籍の附票、除籍謄本など、可能な限りの書類を取得しても登記記録上の住所と一致しない場合には、不在住証明書、所有権についての権利証(登記済証・登記識別情報通知)、さらに相続人全員による証明書(上申書)などを提出することで、相続登記を行うことが実務上認められています。
ただし、通常の相続登記と比べて手間や費用が大幅に増えるおそれがあります。特に自宅以外にも不動産を所有している場合などは、登記簿に記載されている住所を確認し、変更登記が必要な場合には早めに手続きを行っておくことが望ましいでしょう。
・被相続人の最後の住所と、登記簿上の住所が違う場合
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