不在者財産管理人の選任(行方不明の相続人)

不在者財産管理人とは、行方不明者の財産を管理するため家庭裁判所が選任する人です。選任申立ての要件、申立人、必要書類、候補者、予納金、権限外行為許可、遺産分割、選任後の職務について解説します。

不在者財産管理人の選任

相続人の中に行方不明者がいる場合の相続手続きや、不在者財産管理人選任、失踪宣告など家庭裁判所へ提出する書類の作成については、千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)へご相談ください。

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不在者財産管理人の選任(行方不明の相続人)

(最終更新日:2026年8月27日)

不在者財産管理人とは、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない人(不在者)について、その財産を管理するために家庭裁判所が選任する人です。

相続人の中に行方不明者がいる場合、その人を除外して遺産分割協議をすることはできません。このような場合には、不在者財産管理人を選任し、家庭裁判所から権限外行為の許可を得たうえで、不在者に代わって遺産分割協議に参加してもらう方法があります。

ただし、単に住所や連絡先を知らないというだけで、直ちに不在者財産管理人を選任できるわけではありません。まずは、戸籍の附票や住民票などによって現在の住所を調査し、郵便の送付や親族への照会などにより所在を確認する必要があります。

1.不在者財産管理人とは

1-1.不在者に該当する人

1-2.不在者財産管理人を選任する目的

1-3.失踪宣告との違い

2.不在者財産管理人選任の申立て

2-1.申立人

2-2.申立先の家庭裁判所

2-3.申立てに必要な書類

2-4.不在者財産管理人の候補者

2-5.申立てに必要な費用と予納金

3.不在者財産管理人が選任されるまでの流れ

4.不在者財産管理人の権限と職務

4-1.財産の管理と家庭裁判所への報告

4-2.権限外行為許可が必要となる場合

4-3.不在者に代わって遺産分割協議をする場合

4-4.不在者財産管理人の報酬

4-5.不在者財産管理人の職務が終了する時期

5.不在者財産管理人選任申立書の作成についてのご相談

1.不在者財産管理人とは

不在者が財産管理人を置いていない場合、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の申立てにより、不在者の財産を管理するために必要な処分をすることができます。この処分の一つが、不在者財産管理人の選任です。

不在者財産管理人は、不在者本人に代わって財産を管理し、財産目録や管理報告書を作成して家庭裁判所へ提出します。また、家庭裁判所の許可を受けることにより、不在者に代わって遺産分割協議をしたり、不動産を売却したりすることもできます。

1-1.不在者に該当する人

不在者とは、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない人をいいます。

不在者に該当するために、その人が生死不明であることまでは必要ありません。生存していることは明らかであっても、現在の所在が分からず、本人による財産管理ができない場合には、不在者に該当することがあります。

一方、遠方や海外に住んでいても、本人と連絡を取ることができ、本人が自ら財産を管理したり、代理人を選任したりできる場合には、通常、不在者には該当しません。

家族や他の相続人が連絡先を知らないというだけでも足りません。家庭裁判所では、不在者が従来の住所または居所を去った経緯、最後に連絡が取れた時期、その後におこなった住所調査や捜索の内容などを確認して、不在者に該当するかを判断します。

1-2.不在者財産管理人を選任する目的

不在者財産管理人の選任申立ては、主に次のような場合に利用されます。

  • 不在者が所有する不動産や預貯金などを管理する必要がある場合
  • 相続人の中に不在者がいるため、遺産分割協議ができない場合
  • 不在者と共有する不動産を売却する必要がある場合
  • 不在者が取得する金銭や財産を受領し、管理する必要がある場合
  • 不在者の財産について契約や裁判手続きなどをする必要がある場合

不在者財産管理人は、不在者本人の利益を保護するために選任されます。申立人や他の相続人の希望を実現するためだけの制度ではありません。

そのため、遺産分割や不動産の売却などを目的として申し立てる場合でも、その内容が不在者に不利益を与えるものであれば、家庭裁判所の許可を得られないことがあります。

1-3.失踪宣告との違い

不在者財産管理人制度は、不在者を生存している人として扱い、その人の財産を管理する制度です。不在者財産管理人が選任されても、不在者が死亡したものとみなされることはなく、不在者本人について相続が開始することもありません。

これに対し、失踪宣告は、生死が一定期間にわたって明らかでない人について、家庭裁判所の審判により法律上死亡したものとみなす制度です。

普通失踪では、生死が7年間明らかでない場合に、その7年間が満了した時に死亡したものとみなされます。危難失踪では、死亡の原因となる危難が去った後1年間生死が明らかでない場合に、その危難が去った時に死亡したものとみなされます。

失踪宣告の要件を満たしている場合でも、当然に失踪宣告を選択するわけではありません。

どちらの制度を利用すべきかは、本人の生死に関する状況、行方不明となっている期間、手続きの目的、死亡したものとみなされる時期、失踪宣告によって生じる相続関係などを考慮して判断する必要があります。

失踪宣告の申立てについて

2.不在者財産管理人選任の申立て

2-1.申立人

不在者財産管理人の選任を申し立てることができるのは、次の人です。

  • 利害関係人
  • 検察官

利害関係人には、不在者の配偶者、不在者の相続人となる人、不在者との共同相続人、不在者の債権者や債務者などが該当します。

たとえば、遺産分割協議をする必要がある共同相続人は、不在者財産管理人の選任を求める法律上の利害関係を有するため、申立人となることができます。

2-2.申立先の家庭裁判所

不在者財産管理人選任の申立先は、不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所です。

たとえば、不在者の従来の住所地または居所地が、松戸市、柏市、流山市、野田市、我孫子市または鎌ケ谷市である場合には、千葉家庭裁判所松戸支部が申立先となります。

申立先は、原則として、不在者の従来の住所地または居所地によって定まります。不在者の財産所在地や申立人の住所地によって決まるわけではないため、注意が必要です。

2-3.申立てに必要な書類

不在者財産管理人選任の申立てには、通常、次の書類が必要です。

  • 不在者財産管理人選任申立書
  • 不在者の戸籍謄本
  • 不在者の戸籍の附票
  • 財産管理人候補者の住民票または戸籍の附票
  • 不在の事実を証する資料
  • 不在者の財産に関する資料
  • 申立人の利害関係を証する資料

不在の事実を証する資料としては、警察へ行方不明者届を提出したことを証する書類、不在者宛てに送付して返戻された郵便物、親族や関係者の陳述書などが考えられます。

不在者の財産に関する資料としては、不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し、残高証明書、有価証券や保険契約に関する資料などを提出します。

遺産分割を目的として申し立てる場合には、被相続人の相続関係を証する戸籍謄本、遺産目録、遺産分割協議書案などの提出を求められることがあります。

必要となる書類は、不在者が行方不明となった経緯、申立ての目的、管理すべき財産の内容などによって異なります。申立て後に、家庭裁判所から追加資料の提出を求められることもあります。

2-4.不在者財産管理人の候補者

不在者財産管理人になるために、法律上特別な資格は必要ありません。申立人は、不在者の親族などを財産管理人候補者として申し立てることができます。

ただし、候補者として申立書に記載した人が、必ず選任されるわけではありません。

家庭裁判所は、不在者との関係、候補者と不在者との利害関係、管理する財産の内容、候補者が適切に職務をおこなえるかなどを考慮して、不在者財産管理人を選任します。

遺産分割協議をする場合など、候補者と不在者との利害が対立する可能性があるときには、その候補者が選任されず、弁護士や司法書士などの専門職が選任されることがあります。

2-5.申立てに必要な費用と予納金

不在者財産管理人選任の申立てには、次の費用が必要です。

  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便料

郵便料と納付方法は、申立先の家庭裁判所によって異なります。

また、不在者の財産から、財産を管理するための費用や不在者財産管理人の報酬を支払うことが難しいと見込まれる場合には、家庭裁判所から予納金の納付を求められることがあります。

とくに、不在者の財産が不動産のみである場合や、管理費用・報酬に充てられる預貯金などの流動資産が十分にない場合には、申立人に対し、50万円から100万円程度の予納金の納付を求められることがあります。

予納金は、不在者財産管理人の報酬や、財産管理に必要となる費用に充てられます。予納金の有無と金額は、不在者の財産、管理事務の内容、専門職を選任する必要性などに応じて家庭裁判所が決定するため、上記の金額は目安です。

最新の郵便料や必要書類については、申立先の家庭裁判所または裁判所の案内を確認する必要があります。

不在者財産管理人選任(裁判所ウェブサイト)

3.不在者財産管理人が選任されるまでの流れ

(1)不在者の住所・所在の調査

まず、不在者の戸籍謄本、戸籍の附票、住民票などを取得して、現在の住所を調査します。判明した住所へ郵便を送付したり、親族や関係者へ照会したりしても所在を確認できない場合には、その調査結果を申立書や陳述書にまとめます。

(2)家庭裁判所への申立て

申立書、戸籍謄本、不在の事実を証する資料、不在者の財産に関する資料などをそろえ、不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。

(3)家庭裁判所による審理

家庭裁判所は、提出された書類を確認し、申立人から事情を聴いたり、不在者の親族などへ照会したりします。候補者がいる場合には、その人が不在者財産管理人として適任であるかについても審理されます。必要に応じて、追加資料の提出や予納金の納付を求められることがあります。

(4)不在者財産管理人の選任

家庭裁判所が不在者財産管理人を選任する必要があると判断した場合には、選任の審判がされます。選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を調査し、財産目録や管理報告書を作成して家庭裁判所へ提出します。その後も、家庭裁判所の監督を受けながら、不在者の財産を管理します。

4.不在者財産管理人の権限と職務

4-1.財産の管理と家庭裁判所への報告

不在者財産管理人の主な職務は、不在者の財産を調査し、管理・保存することです。具体的には、次のような職務をおこないます。

  • 不在者の財産を調査する
  • 財産目録や管理報告書を作成する
  • 預貯金や現金を管理する
  • 不動産を維持・管理する
  • 賃料などの収入を受け取る
  • 税金や必要経費を支払う
  • 家庭裁判所へ財産状況を報告する

不在者財産管理人は、不在者本人のために財産を管理する立場にあります。申立人や他の相続人の指示に従って財産を処分できるわけではありません。

また、不在者の財産を不正に使用した場合には、不在者財産管理人を改任されるほか、損害賠償請求を受けるなどの民事上の責任や、業務上横領などの罪による刑事上の責任を問われることがあります。

4-2.権限外行為許可が必要となる場合

不在者財産管理人が当然におこなえるのは、財産の保存や、財産の性質を変えない範囲での利用・改良などです。

次のような行為をする場合には、不在者財産管理人の通常の権限を超えるため、事前に家庭裁判所から権限外行為の許可を受ける必要があります。

  • 不在者に代わって遺産分割協議をする
  • 不在者が所有する不動産を売却する
  • 不在者と他の人が共有する不動産を売却する
  • 不在者の財産について重要な契約を締結する
  • 不在者の財産を処分する

家庭裁判所へ権限外行為許可の申立てをする際には、遺産分割協議書案や売買契約書案など、予定している行為の内容が分かる資料を提出します。

許可を得る前に、不在者財産管理人が勝手に遺産分割協議書へ署名したり、不動産の売買契約を締結したりすることはできません。

4-3.不在者に代わって遺産分割協議をする場合

相続人の中に不在者がいる場合には、不在者財産管理人が不在者に代わって遺産分割協議へ参加することができます。ただし、遺産分割協議は不在者財産管理人の通常の権限を超えるため、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。

家庭裁判所では、不在者の法定相続分が確保されているか、不在者に不利益となる財産の評価や分割方法になっていないかなどが審査されます。他の相続人だけに有利な内容や、不在者の取得分が不当に少ない内容では、原則として許可を得ることは困難です。

また、遺産分割協議が成立しただけで、不在者財産管理人の職務が当然に終了するわけではありません。不在者財産管理人は、遺産分割によって不在者が取得した預貯金や不動産などについても、引き続き管理する必要があります。

4-4.不在者財産管理人の報酬

不在者財産管理人は、家庭裁判所へ報酬付与の申立てをすることができます。

報酬の有無と金額は、管理した財産の内容や金額、職務の期間、事務の難易度などを考慮して家庭裁判所が決定します。

報酬は、原則として不在者本人の財産から支払われます。申立時に予納金が納付されている場合には、その予納金が管理費用や報酬に充てられることがあります。

4-5.不在者財産管理人の職務が終了する時期

不在者財産管理人の職務は、選任申立ての目的を達成しただけでは終了しません。

たとえば、遺産分割を目的として選任された場合でも、遺産分割協議が成立した時点で当然に職務が終了するわけではありません。

不在者財産管理人の職務は、主に次のような場合まで続きます。

  • 不在者本人が戻り、財産を本人へ引き継いだ場合
  • 不在者について失踪宣告がされた場合
  • 不在者が死亡していたことが確認された場合
  • 管理すべき不在者の財産がなくなった場合

不在者について失踪宣告がされた場合や、死亡していたことが確認された場合には、不在者の相続人へ財産を引き継ぐことになります。

不在者財産管理人の判断だけで職務を終了することはできません。家庭裁判所の指示に従って、財産の引継ぎや最終報告などをおこなう必要があります。

5.不在者財産管理人選任申立書の作成についてのご相談

不在者財産管理人選任の申立てでは、不在者が従来の住所または居所を去った時期や経緯、その後におこなった住所調査や捜索、不在者の財産、申立ての目的などを申立書に記載し、これらを裏付ける資料を提出します。

遺産分割を目的とする場合には、不在者財産管理人の選任だけでなく、権限外行為許可、遺産分割協議書の内容、遺産分割後の相続登記まで検討する必要があります。

また、不在者財産管理人と失踪宣告のどちらを利用すべきかは、行方不明となっている期間だけでなく、死亡したものとみなされる時期や、その場合の相続関係も確認して判断する必要があります。

高島司法書士事務所では、不在者財産管理人選任申立書、権限外行為許可申立書その他の家庭裁判所提出書類の作成に加え、遺産分割協議書の作成や相続登記についてもご相談を承ります。

行方不明の相続人がいる場合の相続手続き、不在者財産管理人選任、失踪宣告については、千葉県松戸市の高島司法書士事務所へご相談ください。

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