嫁に行ったら遺産相続権はなくなるのか?
(公開日:2014年1月14日、最終更新日:2025年10月3日)
この記事は、「嫁に行ったら相続権はなくなるのか」について、高島司法書士事務所(千葉県松戸市)が解説しています。
結論から申し上げると、結婚して夫の氏(姓)に変わったからといって、実の父母に対する相続権が失われることはありません。結婚の有無や氏(姓)の変更の有無によって、実親と子の相続関係が左右されることはないのです。
遺産相続に関するご相談は、千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)へどうぞ。当事務所へのご相談は予約制ですので、詳細は「ご相談予約・お問い合わせ」のページをご覧のうえ、事前にご連絡ください。
結婚して嫁に行ったら実父母の相続権はなくなるのか
(質問)
女性が結婚して氏(姓)が変わった場合、実家不動産や実父母の遺産を相続する権利はなくなるのでしょうか。
(回答)
勘違いされている方も多いようですが、結婚して夫の氏(姓)を名乗ったとしても、実の父母に対する相続権が失われることはありません。
「お嫁に行く」「嫁入りする」といった表現は今でも使われます。しかし、実際には婚姻届の提出に際し、結婚後に「夫婦のいずれの氏(姓)を称するか」を選択しているに過ぎず、どちらかの家に入るわけではありません。
婚姻により、夫婦の戸籍が新たに編製されます。配偶者の親の戸籍に入るのではありません。したがって、結婚しても実の親子関係に変動はなく、相続権にも影響はありません。
現行法(民法)では、子の相続権はすべて平等です。すなわち、子であれば、嫁いだ娘であっても、家の跡取りとなる長男であっても、遺産を相続する権利(相続分を含む)は同一です。
長男の相続分が次男より多いということはありません。子が長男・長女・次男の3人であれば、その相続分はそれぞれ3分の1ずつで全く同じです。
余談ですが、現在でも結婚の際には妻が夫の氏(姓)を称する例が多く、そのため「相手の家に嫁に行く」「嫁入りする」という表現が用いられることがあります。
もっとも、結婚して夫の氏(姓)に変わったからといって、妻(嫁)が義父母の相続権を取得するわけではない点には注意が必要です。義父母の相続人となるのは、義父母(または義父・義母のいずれか)と養子縁組をしている場合に限られます。
なお、令和元年7月1日施行の民法改正により、相続人でない被相続人の親族で、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした者(特別寄与者)は、相続人に対し、寄与に応じた金銭(特別寄与料)の支払いを請求できるようになりました(民法1050条)。
これにより、妻(嫁)が夫の父母の療養看護や介護に従事していた場合、特別寄与料の支払いを受けられることがあります。
特別の寄与の制度が設けられる以前は、子の配偶者(嫁)は義父母の相続人ではないため、どれだけ尽くしても相続財産を受け取る権利は一切ありませんでした。法改正により、相続人でない親族にも、相続人に対する金銭請求という形で経済的利益を取得し得る道が開かれたのです。
家とは何か(旧民法の名残り)
以下では、旧民法における家制度について簡単に解説します。ここまでお読みいただき、「嫁に行っても相続権は変わらない」という結論をご理解いただけていれば十分ですが、なぜ現在でも「家(いえ)」や「嫁(よめ)」といった概念が持ち出されるのかに関心があれば、参考としてご覧ください。
そもそも「家」という制度が存在したのは旧民法の時代であり、1947年(昭和22年)の民法改正により廃止されました。家制度の下では、戸主(こしゅ)が家督相続(かとくそうぞく)によってすべての遺産を承継しました。通常は長男が戸主となっていたため、「家を継ぐ長男がすべての遺産を相続する」という発想は、ここに起源があります。
旧民法の家制度では、戸主以外の者には遺産相続権がありませんでした。したがって、男女の別や、嫁に行ったか否かは無関係でした。また、当時は婚姻により相手方の「家」の戸籍に入るのが一般的でした。現在は一つの戸籍に入るのは親子二世代のみですが、当時は「家」単位で戸籍が作成されていたためです。
そのため、夫の父が戸主である場合には、その戸籍に「子の妻」として入ることになりました。この仕組みであれば、たしかに「嫁に行く」という表現がしっくりきます。もっとも、現行法(戸籍法)では、婚姻届の提出によって夫婦の新戸籍が編製されます。その際、夫婦のいずれの氏(姓)を称するかを選択するに過ぎません。
現状では妻が夫の氏(姓)を称する例が多いのは事実ですが、だからといって「嫁に行った」という表現は適切ではありません。氏が同一であっても新たな戸籍が作成されるのであり、あえて「家」という語を用いるなら、婚姻によって新たな家が成立したと捉えるべきです。
結局のところ、「嫁に行ったから」「長男だから」といった考え方は、1947年の改正で廃止された家制度の名残に過ぎません。ご高齢の方の中には当時の感覚を今も引きずる向きがあるかもしれませんが、現代の民法の下では法的根拠はありません。
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