建物明渡執行(強制執行申立)

建物明け渡し請求訴訟を提起して勝訴判決を得ても、自主的に建物の明渡しをしない場合、強制執行(建物明け渡し執行)をすることで、強制的に建物の明け渡しを実現することになります。

建物明け渡し(強制執行申立)

現在、当事務所で取り扱っている裁判所の手続きは原則として次のようなもののみとなっています。

・家庭裁判所での相続や遺言に関連する手続き

・消費者金融、クレジットカー、債権回収会社などによる、簡易裁判所での訴訟や支払督促への対応(消滅時効の援用など)。

個人間の争い(金銭トラブルなど)についてのご相談はうけたまわっておりません。

建物明け渡し請求訴訟を提起して勝訴判決を得ても、自主的に建物の明渡しをしない場合、強制執行(建物明け渡し執行)をすることで、強制的に建物の明け渡しを実現することになります。

建物明け渡しの強制執行をするには、執行官の手数料の他、運送会社に支払う作業員日当、遺留品運搬費用、倉庫保管費用など様々な費用がかかります。

そのため、たとえ多少の引っ越し費用を支払ったとしても、任意に退去させた方が経済的には得な場合も多いでしょう。それでも、相手方と話をすることすら出来ないときや、荷物をそのままにして立ち去ってしまったような場合には、建物明け渡しの強制執行をするしかありません。

以下、東京地方裁判所に建物明け渡しの強制執行申立をする際の大まかな流れを解説します。ただし、申立書の提出は司法書士におまかせいただけますし、当事務所ではその後の手続きについても司法書士が同行しますから、とくに難しいことはありません。

1.強制執行申立

建物明け渡しの強制執行は地方裁判所に申立します。その前に、判決を得た簡易裁判所で、判決送達証明書の交付および判決正本への執行文付与申立をします。続いて、強制執行申立をおこないますが、その際には主に次のような書類が必要です。

1.執行文の付された債務名義正本(判決正本等)
2.債務名義正本の送達証明書
3.強制執行申立書(引き渡し等執行申立書)
物件目録、当事者目録等を綴り、各ページに契印またはページ番号を付す
4.申立書添付書類
物件目録(7枚)、当事者目録(6枚)
5.債務者に関する調査表
氏名、性別、年齢、在宅状況、職業等の状況を分かる範囲で記入
6.執行場所の案内図
最寄り駅から執行場所までの経路が分かるもの
7.印鑑
8.予納金 65,000円
債務者1名、物件1個増すごとに25,000円加算

上記の申立書類を地方裁判所の執行官室に提出します。申立が受理されると、保管金提出書、面接票が交付されます。予納金(65,000円)を納めたら、この日の手続きは終了です。

2.執行官との面接

予納金を納付した日の翌日以降に、執行官と面接します。申立時に渡された面接票に債権者、債権者代理人、債務者、執行場所を記入し、面接当日の午前8時50分から9時20分の間に「面接票入れ」に入れて、呼び出しがあるのを待ちます。

面接は午前9時から9時25分までの間におこなわれます(執行官が9時30分には執行場所に向けて出発するため)。面接の際には、執行場所や、債務者の状況、合い鍵により入室が可能であるかなど、執行に必要な事項について、執行官から確認を受けます。明渡催告期日もこの時に決定します。

また、自分で運送会社などの手配をする場合を除き、面接時にその場で、執行官から執行補助者の紹介を受けることになると思われます。執行補助者も明渡催告期日に現地に行き、その際に費用の見積をします。

3.明渡催告期日

明渡催告期日には、執行官が現地に行って、任意の明け渡しを求めるとともに、明渡断行期日の指定告知をします。

まずは、ポストや電気、ガスのメーターなどにより居住の状況を確認してから、執行官が室内に呼びかけます。債務者が任意に鍵を開けない場合や、不在のときであっても、鍵を開けて強制的に室内に立ち入ることができます。そのため、債権者所有の合鍵が使用できないような場合には、開錠の技術者を手配しておきます。

室内に立ち入った際に、執行補助者が中に置かれているものを確認して明渡作業費用の見積をします。このときの執行補助者の費用は、執行予納金とは別にかかります。

最後に、明け渡しの断行期日(強制執行期日)を記載した催告書・公示書を室内の壁に貼り付け、室内をもとの状態に戻して終了です。

なお、明渡催告は、やむを得ない事由がある場合を除き、不動産等の明渡しの強制執行の申立てがあった日から二週間以内の日に実施するものとされています(民事執行規則第154条の3)。

また、断行期日までに任意で退去した場合には断行不要となりますから、執行官および運送会社に通知し取下書を提出します。執行補助者や執行労務作業員の費用については、前日正午までであればキャンセル費用はかからないと思われます。

運送会社や執行補助者に支払う明渡作業費用は、個々のケースにより異なります。1人暮らしのアパートの1室でそれほど荷物も多くないような場合には20万円以内で済むこともありますが、家族で生活していたマンションの場合には30万円~50万円程度はかかるのが通常だと思われます。

3.明渡断行期日

催告期間内に任意の明け渡しが無かった場合、明渡断行期日に執行官が再び現地に行って、明け渡しが断行されます。執行補助者が手配した運送会社の作業員が、建物内に残されている荷物の搬出・保管をします。

明け渡しをするのと同じアパートなどに空き部屋があるときには、そこを保管場所にできることもあります。この場合、トラックなどによる運搬が不要ですから、明渡作業費用が安く抑えられることになるでしょう。

執行官により建物が債権者に引き渡されたら、明け渡しの断行(強制執行)は終了です。鍵の交換もこのときにおこなえるよう、事前に手配しておきます。

4.目的外動産(遺留品)の売却

明け渡しの断行期日に、室内に置かれていた荷物(目的外動産)の売却がおこなわれないときは、保管の日から1ヶ月未満の日が売却期日として指定されます。その日までに、債務者が荷物を取りに来れば引き渡しますが、そうでなければ売却期日に売却がおこなわれます。

金銭的価値のあるものが無いような場合には、保管費用と相殺することで、債権者が金銭の負担をすることなく買い受けできることもあります。

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