子の妻(嫁)は義父の遺産を相続できるのか
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子の妻(嫁)は義父の遺産を相続できるのか
(最終更新日:2025年10月9日)
(質問)
私は、嫁いだ先の両親(義父・義母)と同居しています。
私の夫はすでに亡くなっていますが、長年同居してきたこともあり、現在は私が高齢の義父母の世話をしています。
このような状況で、義父が亡くなった場合、私にも義父の遺産を相続する権利はあるのでしょうか?
(回答)
結論から申し上げますと、義父と養子縁組をしていない限り、義父の遺産を相続することはできません。
ただし、後述する「特別寄与料」を請求できる可能性があります。
■ 相続関係の基本
ご質問者(子の妻)と義父との間には、法律上の親子関係が存在しません。
義父は「配偶者の父(直系尊属)」にあたりますが、民法上の相続人となるのは血族または配偶者に限られるため、「子の配偶者」である嫁には相続権がありません。
■ 義母が相続した後のケース
仮に、義父の死亡により、義母が土地や建物などすべての遺産を相続したとします。
その後もご質問者が義母と二人で暮らし続け、義母が亡くなった場合を考えましょう。
この場合も、義母の遺産を嫁が相続することはできません。
義母との間にも親子関係がないため、法律上の相続人にはならないからです。
したがって、義母の遺産は義母の法定相続人にすべて承継されることになります。
■ 義母の相続人
・義母に子(=質問者の亡き夫の兄弟姉妹、またはその子)がいる場合 → 義母の子(またはその代襲相続人)が第1順位の相続人としてすべての遺産を相続します。
・義母に子がいない場合 → 義母の兄弟姉妹、またはその代襲相続人(甥・姪)が第3順位の相続人となります。
このように、場合によっては、義母の甥や姪がすべての相続権を取得することもあります。
■ 子の妻(嫁)の法的立場とリスク
ご質問者(子の配偶者)は、義父母の財産に対して一切の相続権を持たないため、相続発生後には、これまで生活の基盤としてきた不動産を相続人から処分される可能性もあります。
その結果、長年同居・介護をしてきたにもかかわらず、生活上の不安定な立場に置かれるケースもあります。
子の妻(嫁)の寄与分は認められるのか
■ 寄与分の制度とは
「寄与分」とは、
被相続人の財産の維持または増加に特別の貢献をした相続人に対して、その貢献を考慮して法定相続分よりも多い相続分を認める制度です(民法第904条の2)。
たとえば、長年にわたり被相続人の事業を手伝ったり、療養看護を行ったりして財産の維持に貢献した場合などが該当します。
民法904条の2第1項
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
■ 嫁(子の妻)に寄与分は認められるのか
寄与分が認められるのは、あくまでも相続人であることが前提です。したがって、相続人ではない子の妻(嫁)に寄与分が認められることはありません。
たとえ義父母の介護や看護、家事などに長年尽力していたとしても、法律上は相続人ではないため、相続財産の一部を受け取る権利(寄与分)は認められないのです。
特別寄与料の制度
こうした不公平を是正するために、平成30年の民法改正(施行:令和元年7月1日)により「特別寄与料」の制度が新たに設けられました(民法第1050条)。
この制度により、相続人ではない親族であっても、被相続人に対して無償で療養看護や労務の提供を行い、その結果として被相続人の財産の維持または増加に特別な寄与をした場合には、相続人に対して特別寄与料の支払いを請求することができるようになりました。
つまり、義父母の介護などを長年担ってきた子の配偶者(嫁)も、条件を満たせばこの制度の対象となり、「特別寄与者」として金銭の支払いを求めることができます。
民法1050条1項
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
■ 特別寄与料の請求手続と期限
特別寄与料の金額は、まず相続人との協議によって定めます。
もし協議が整わない場合には、家庭裁判所に対して「協議に代わる処分」の請求をすることができます。
ただし、請求には期限があります。次のいずれか早い時点を過ぎると、請求はできなくなります。
- 特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6か月以内
- または、相続開始から1年以内
これらの期間を過ぎてしまうと、どれほど貢献していたとしても特別寄与料を請求することはできませんので、注意が必要です。
■ 特別寄与料制度の適用範囲
この特別寄与料制度が適用されるのは、令和元年7月1日以降に開始した相続に限られます。
それ以前に開始した相続には適用されません。
■ まとめ
- 「寄与分」は相続人にしか認められない。
- 子の妻(嫁)は相続人ではないため、寄与分は認められない。
- ただし、平成30年民法改正により、 相続人以外でも「特別寄与料」として貢献に応じた金銭を請求できる制度が創設された。
- 特別寄与料の請求には期限があり、速やかな対応が必要。
子の配偶者(嫁)に相続財産を引き継がせる方法
■ 養子縁組による方法
子の配偶者(嫁)に相続財産を引き継がせるためには、義父母と養子縁組をする方法が考えられます。
養子となった場合、民法上は実子と同じく第1順位の法定相続人となり、義父母の遺産について法定相続分を有する立場になります。
ただし、相続権を得ることを目的として養子縁組を行うのは、家族関係や心理的な抵抗も大きく、現実的には難しい場合も少なくありません。
特に、他の相続人(義父母の実子など)との関係性を考慮する必要があります。
■ 遺言書による遺贈の方法
もう一つの現実的な方法として、義父母が遺言書を作成し、子の妻に財産を遺贈するという手段があります。
これは、遺言で「遺言者は、遺言者の有する下記の財産を、遺言者の長男○の妻であるAに遺贈する」というように明記しておくことによって、相続人でない者にも財産を残すことができます。
■ 遺留分への配慮
遺言によって子の配偶者(嫁)に遺贈をする場合でも、他の法定相続人(子や配偶者)には遺留分が認められています。
そのため、遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
しかし、何の対策も取らない場合に比べれば、遺言で明確に意思を示しておく方がはるかに有効です。
また、義父母が「自らの意思で世話になった嫁に財産を残す」との意思表示をしておくことにより、他の相続人による異議や争いを抑止する効果も期待できます。
■ 対策を行わない場合のリスク
繰り返しになりますが、養子縁組をしておらず、かつ遺贈を受ける遺言も存在しない場合には、子の配偶者(嫁)は相続財産に対して一切の権利を持ちません。
(ただし、義父母の介護や看護などにより特別な貢献があった場合は、特別寄与料の請求ができる可能性があります。)
したがって、嫁の世話になっている義父母としては、「自分の遺産を誰に、どのように承継させるのか」をしっかりと考え、生前に法的な対策を講じておくことが重要です。
■ まとめ
- 子の妻(嫁)は、養子縁組をしていない限り法定相続人にはならない。
- 養子縁組を行えば相続権を取得できるが、心理的・実務的ハードルがある。
- 遺言書により遺贈をすることで、嫁に財産を承継させることが可能。
- 遺言により明確な意思を示すことで、相続トラブルの抑止効果もある。
- 対策を講じない場合、嫁は財産を受け継ぐ権利を一切持たない。
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