相続放棄と遺産分割協議の違い(相続登記の方法)| 松戸の高島司法書士事務所

夫名義の不動産を妻が相続する場合、子は相続放棄をする必要があるのでしょうか。相続放棄と遺産分割協議の違い、相続登記の方法、子全員が相続放棄した場合の注意点について、松戸の高島司法書士事務所が解説します。

相続放棄と遺産分割協議の違い(相続登記の方法)

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子が相続しない場合は、相続放棄ではなく遺産分割協議によるのが通常です

(最終更新日:2026年7月1日)

(質問)
被相続人は夫、相続人は妻および子3人です。夫が所有していた不動産を妻が相続する場合、子3人は相続放棄をすることになるのでしょうか。

相続放棄と遺産分割協議の違い(松戸の高島司法書士事務所)

1.遺産分割協議による相続登記


(回答)
ご質問のようなケースでは、子の全員が相続放棄をするのではなく、妻と子3人により遺産分割協議をするのが通常です。

相続放棄は、家庭裁判所で手続を行うことにより、最初から相続人ではなかったものとして扱われる制度です。一方、遺産分割協議は、相続人全員の話し合いにより、誰がどの遺産を取得するかを決める手続です。

したがって、「妻が不動産を取得し、子は取得しない」という内容にしたいのであれば、通常は相続放棄ではなく、妻と子3人による遺産分割協議によって手続を進めます。

具体的には、「妻が不動産を取得する」という内容の遺産分割協議書を作成し、妻と子3人が署名し、実印により押印します。

そして、上記の遺産分割協議書を添付して相続登記の申請をすることにより、妻が不動産を取得することが可能になります。

この場合の遺産分割協議書の記載例は、次のとおりです。

遺産分割協議書

被相続人 A (令和○年○月○日死亡)

最後の本籍 千葉県松戸市松戸○番地○

最後の住所 千葉県松戸市松戸○番地の○

 上記被相続人の遺産について、共同相続人間において遺産の分割について協議をした結果、次のとおり決定した。

第1 相続人Bは、下記不動産を取得する。

所在 松戸市松戸

地番 ○番

地目 宅地

地積 100.11㎡

 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本書を作成し、署名捺印する。

令和○年○月○日

相続人 千葉県松戸市松戸○番地 妻B (実印)

相続人 千葉県松戸市新松戸四丁目○番地の1 長女C (実印)

相続人 千葉県松戸市松戸○番地 長男D (実印)

相続人 千葉県流山市西松ヶ丘一丁目○番地 二女E (実印)

2.一部の相続人が相続放棄した場合

それでは、妻と子3人が相続人である場合に、子の一部が相続放棄したとき、妻が不動産を相続するにはどのような手続が必要となるでしょうか。


相続放棄をするには、家庭裁判所で手続を行う必要があります。

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ相続放棄の申述をし、それが受理されることにより相続放棄の効力が生じます。

相続放棄をした人は、その相続に関しては、最初から相続人でなかったものとみなされます。そのため、遺産分割協議をする際には、相続放棄した人を除外して行うことになります。

たとえば、子3人のうち二女のみが相続放棄をした場合には、妻、長女、長男の3人で遺産分割協議を行うことにより、相続登記をすることができます。

この場合、相続登記の申請をする際には、二女についての相続放棄申述受理証明書を添付する必要があります。

3.子の全員が相続放棄した場合

上記のとおり、子の一部が相続放棄した場合には、その子を除外して遺産分割協議を行うことにより相続登記をすることができます。

それならば、子の全員が相続放棄をすれば、妻が唯一の相続人として不動産を相続することができるのでしょうか。

ここで注意すべきなのは、子の全員が相続放棄したときには、後順位の相続人へ相続権が移る場合があることです。


上図の相続関係の場合に、子3人全員が相続放棄したときには、被相続人の母が相続人となります。

そのため、被相続人の妻が不動産を相続するためには、被相続人の母と妻の2人により遺産分割協議をする必要があります。

被相続人の母から協力が得られるならば、とくに問題が生じない場合もあるでしょう。

しかし、被相続人の母が相続人になると分かっていたならば、子の全員が相続放棄するとの選択はしなかったかもしれません。

このように、妻に不動産を相続させる目的で子の全員が相続放棄をしても、必ずしも妻が単独で相続できるわけではありません。かえって、当初は相続人でなかった親族が相続人となり、手続が複雑になることがあります。

4.被相続人の兄弟姉妹などが相続人になる場合

被相続人の子の全員が相続放棄した場合に、被相続人の兄弟姉妹や、その子どもである甥・姪が相続人になることもあります。


上図の相続関係では、被相続人の直系尊属の全員が亡くなっており、さらに被相続人の兄も先に亡くなっています。この場合に、子3人全員が相続放棄したときには、被相続人の兄の子が相続人になります。

そのため、妻が不動産を相続するためには、夫の甥に遺産分割協議への協力を得る必要があります。

このようなケースでは、甥や姪とほとんど交流がないことも少なくありません。協力を得るのが難しい場合には、妻が不動産を取得するための手続が大きく複雑化してしまうおそれがあります。

そのため、単に「子が財産を取得しないようにしたい」という目的であれば、子が相続放棄をするのではなく、妻と子全員で遺産分割協議を行うのが通常です。

5.相続放棄を選択すべき場合

ここまでご説明してきたとおり、相続人中の1人に遺産を相続させようとする場合には、相続人全員により遺産分割協議をするのが通常です。

数人いる子のうちの1人など、相続人中の一部が相続放棄をすることで、他の相続人へ相続権を集中させることもできます。

しかし、子の全員が相続放棄した場合には、後順位の相続人へ相続権が移ることがあります。そのため、相続放棄をすることによる影響を事前によく確認しておく必要があります。

遺産分割協議によるのではなく、相続放棄を選択すべき場合としては、被相続人に債務が存在するときがあります。

相続放棄をした人は、その相続に関しては、最初から相続人でなかったものとみなされます。そのため、被相続人の債務を引き継ぐこともなくなります。

これに対し、遺産分割協議により「特定の相続人が債務を引き継ぐ」と決めたとしても、その合意によって当然に他の相続人が債権者に対する支払義務を免れるわけではありません。

そのため、相続人中の一部が、被相続人の財産も負債も引き継ごうとするような場合には、他の相続人が相続放棄をする実益があります。

ただし、このような場合であっても、後順位者に相続権が移ってしまったり、予期しない事態が生じたりすることのないよう、事前によく確認してから手続を行うべきです。

相続放棄をしようとする場合には、事前に司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

6.まとめ

不動産を妻に相続させたい場合、子が財産を取得しないからといって、必ずしも相続放棄をする必要はありません。通常は、妻と子全員で遺産分割協議を行い、「妻が不動産を取得する」と定めた遺産分割協議書を作成して相続登記を申請します。

相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものと扱われますが、子の全員が相続放棄した場合には、被相続人の父母や兄弟姉妹など、後順位の相続人に相続権が移ることがあります。

そのため、相続放棄を選択するか、遺産分割協議によるべきかは、相続人の範囲や債務の有無などを確認したうえで慎重に判断する必要があります。相続登記や相続放棄の手続でお困りの場合には、松戸の高島司法書士事務所へご相談ください。

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