相続放棄と法定単純承認 | 千葉県松戸市の高島司法書士事務所

相続放棄ができるのは、相続人が単純承認したものとみなされるまでの間です。どのような場合に、単純承認したものとみなされるかは、民法921条(法定単純承認)により次のように定められています。相続放棄のご相談は、千葉県松戸市の高島司法書士事務所へ。

相続放棄と法定単純承認

(最終更新日:2026年2月3日)

相続人は、相続について単純承認・限定承認・相続放棄の3つから選択することができます。相続放棄(または限定承認)ができるのは、法律上 「相続人が単純承認したものとみなされる」 までの間です。

どのような場合に単純承認したものとみなされるかは、民法921条(法定単純承認)により、次のとおり定められています。

  1. 相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき。ただし、保存行為および短期賃貸(民法602条)をすることは、この限りでない。
  2. 相続人が民法915条1項の期間(3か月の熟慮期間)内に限定承認または相続放棄をしなかったとき。
  3. 相続人が、限定承認または相続放棄をした後であっても、相続財産の全部または一部を隠匿し、私に(ひそかに)これを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

上記のいずれかに該当すると、相続を単純承認したものとみなされ、その後に相続放棄をすることはできなくなります。以下、それぞれについて解説しますが、実際の判断にあたっては、信頼できる専門家(弁護士・司法書士)へ相談することをおすすめします。

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  1. 相続財産の処分
  2. 熟慮期間の経過
  3. 相続財産の隠匿など

1.相続財産の処分

相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為および短期賃貸を除く)は、相続を単純承認したものとみなされます(民法921条1号)。

どのような行為が、法定単純承認の効果を生じさせる「相続財産の処分」に当たるかは、相続放棄ができるかどうかを判断するうえで、非常に重要な意味を持つことがあります。

1-1.処分行為とは

「処分行為」とは、財産の現状または性質を変更したり、財産権に法律上の変動を生じさせたりする行為をいいます。

売却などの法律行為だけでなく、相続財産である家屋の取り壊しや動産の毀損などの事実行為も、処分行為に含まれます(なお、相続財産の無償貸与については、処分行為に当たらないとされることがあります)。

たとえば、被相続人名義の銀行預金を引き出し、相続人が自己のために費消した場合は、相続財産の処分に当たるとされる可能性が高いです。

一方で、被相続人の葬儀費用の支払い、支払期限が到来した相続債務(被相続人の借金等)の弁済などについては、後述のとおり、相続財産の処分には当たらないと判断されることも少なくありません。

1-2.保存行為と相続財産の処分

「保存行為」とは、財産の価値を現状のまま維持するために必要な行為です。相続財産について何らかの行為をした場合でも、それが保存行為に該当するときは、法定単純承認の効果を生じさせる「処分行為」には含まれません。

「財産の価値を現状のまま維持する」というと限定的に聞こえますが、期限の到来した債務の弁済や腐敗しやすい物の処分など、相続財産全体の観点から現状維持のために必要と認められる行為についても、処分行為には当たらないと考えられます。

どのような行為が相続財産の処分に当たるかについての詳しい解説は、「相続財産の処分」のページをご覧ください。

2.熟慮期間の経過

相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の法定期間(この期間を「熟慮期間」といいます)内に、相続放棄(または限定承認)をしなかったときは、単純承認したものとみなされます。

「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、相続開始の原因となる事実と、自分が法律上の相続人となった事実を知った時をいいます。これら二つの事実を知ってはじめて、3か月の法定期間が進行します。

一つ目の「相続開始の原因となる事実」とは、被相続人の死亡の事実です。相続人が被相続人の死亡の事実を知らなかった場合には、相続開始から年数が経過していたとしても、死亡の事実を知った時から3か月以内であれば相続放棄が可能となることがあります。

二つ目の「自分が法律上の相続人となった事実」を知った時については、被相続人の配偶者(夫・妻)または子が相続人である場合には、通常、死亡の事実を知った時と一致することが多いでしょう。

しかし、被相続人の直系尊属や兄弟姉妹などが相続人となる場合は、先順位の相続人がいるときには、相続開始を知っても、その時点では相続人になりません。そのため、先順位相続人が相続放棄をしたことを知らなければ、自分が相続人となった事実を知ったことにならない場合があります。

また、相続開始の原因となる事実と、自分が法律上の相続人となった事実の二つを知った時から3か月が経過した後であっても、特別な事情がある場合には、相続放棄の申述ができることがあります。詳しくは、「>3か月経過後の相続放棄」をご覧ください。

3.相続財産の隠匿など

相続人が、限定承認または相続放棄をした後であっても、相続財産の全部または一部を隠匿し、私に(ひそかに)これを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときは、単純承認したものとみなされます(民法921条3号)。

相続財産の全部または一部を他人に隠す行為は「隠匿」に当たります。また、「私に(ひそかに)これを消費」とは、相続財産を自己のために費消・私物化することを指す趣旨であり、必ずしも“こっそり”行われる必要があることを意味するものではありません。

なお、上記のような行為がなされたのが、その相続人が相続放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後である場合には、単純承認したものとみなされません。

たとえば、第一順位相続人である被相続人の子が相続放棄をした後に、その子が相続財産の一部を他人に隠したとします。この場合でも、隠匿行為が行われた時点で、後順位相続人である被相続人の親がすでに相続の承認(単純承認)をしていたのであれば、法定単純承認の効果は生じないことになります。

相続人間で故人を偲ぶよすがとなる遺品を分配する、いわゆる「形見分け」は、原則として相続財産の隠匿には当たらないとされています。もっとも、遺品のほとんどすべてを持ち帰るなど、「形見分け」の範囲を超えるものと評価され、隠匿に該当すると判断された裁判例もあります(東京地方裁判所平成12年3月21日判決)。

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