相続人へ不動産を遺贈すると書かれた遺言による登記原因
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(記事公開日:2013年1月23日)
遺言により、法定相続人へ遺産を相続させる場合には、下記記載例のように「相続させる」との文言を使用するべきです。
ところが、専門家の手を借りること無しに遺言者自身が作成した遺言(自筆証書遺言)では、相続人に対して「遺贈する」、「遺産を贈与する」などの表現を使用していることがあります。
このような表現であっても、相続人である妻へ、不動産の名義変更が可能であることには変わりがありません。しかし、遺贈や贈与など文言が使われている場合には、相続人への名義変更であっても、登記原因が「遺贈」となるのが原則です(例外は後記参照)。
そのため、受遺者である相続人と、遺贈者の相続人全員(または、遺言執行者)との共同申請により、遺贈による所有権移転登記をしなければならないのです。
遺言による相続登記では、不動産を相続した方が単独で登記申請できます。それが、遺贈するとの表現が使われていることだけを理由にして、他の相続人(または、遺言執行者)の協力を得ることが必要になってしまうのです。
ただし、この場合でも、家庭裁判所に遺言執行者の選任をしてもらえば、遺言執行者との共同申請により名義変更(遺贈の登記)が可能ですから、必ずしも相続人全員の協力が必要なわけではありません。
また、受遺者が相続人である場合の登録免許税は、相続の場合と同じ固定資産評価額の1000分の4なので、登記原因が「遺贈」だからといって登録免許税が余計にかかることはありません。
それでも、余計な負担がかかることには違いありませんから、相続人に対しては必ず「相続させる」との表現を使うべきだといえます。
登記原因が相続となる場合
なお、上記の例外として、相続財産の全部を包括名義で贈与する場合であって、相続財産の処分を受ける者が相続人の全員であるときには、遺言書に「遺贈する」との文言が使われていても、「相続」を原因とする所有権移転登記をします。くわしくは下記の先例をご覧ください。また、「遺言書の文言と登記原因(相続、遺贈?)」も参考になるかと思います。
〔要旨〕 遺言書の内容として、相続人の一部の者が相続財産の処分を受けるべきものとされている場合には、その所有権移転の登記は「遺贈」を登記原因とすべきであるが、前記の処分を受けるべき者が相続人の全員である場合には、「相続」を登記原因とすべきものとされる。
(照会) 被相続人が相続人に対し相続財産の全部を包括名義で贈与する旨の遺言があるときは、その遺言書に他に相続分の指定と解せられる記載がない限り、その相続財産全部の処分を受ける者が相続人中の一部の者であると全員であるとに拘らず、当該処分による所有権移転登記の登記原因は遺贈であると考えられるので、本件の場合は遺贈による所有権移転登記を申請しなければならないものと考えるかどうか。
(回答) 相続財産の処分を受ける者が相続人中の一部の者である場合には、貴見のとおり。なお、その処分を受ける者が相続人の全員である場合には、その所有権移転の登記は、相続を登記原因としてなすべきである。(昭和38年11月20日民事甲第3119号・民事局長回答より抜粋)
遺言書の作成は専門家に相談しましょう
この他にも、専門家が関与すること無く作成した遺言書では不備があるケースが非常に多いです。上記のように手間がかかったとしても、遺言者の希望通りに相続できるのであればよいとして、もっと大きなミスがあるために遺言による登記ができないことも決して珍しくはありません。
手軽に作成できるのが自筆証書遺言の利点ではありますが、少しでも不安がある場合には専門家に相談した上で作成するのがよいでしょう。松戸の高島司法書士事務所でも遺言書作成のご相談を承っています。また、当事務所による遺言書作成のページもぜひご覧ください。
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