時効援用後の相続放棄

この投稿は、時効援用と相続放棄の選択について、実際にあった事例をベースにしています。ただし、現状では明確な結論が得られておらず、別の見解もあると思われますのでご注意ください。 亡くなられたご家族(母親)に宛てられた督促状・・・

時効援用後に相続放棄できるか

この投稿は、時効援用と相続放棄の選択について、実際にあった事例をベースにしています。ただし、現状では明確な結論が得られておらず、別の見解もあると思われますのでご注意ください。

亡くなられたご家族(母親)に宛てられた督促状が届きました。内容を確認すると、銀行に対する借金があったことは間違いないようです。相続の開始(死亡の日)からまだ3ヶ月は経過していませんから、家庭裁判所で相続放棄手続きをすれば、債務の支払い義務を相続しないで済むことにはなります。

しかし、母親は5年以上前から老人ホームに入居していました。したがって、本人が借入や返済の取引をおこなうことは無かったはずです。そのため、最後の取引から5年以上が過ぎたことで、消滅時効期間が経過している可能性が高いと考えられます。

この場合でも、相続放棄をしてしまえば安心なのはたしかですが、そうすると次順位の相続人である母の兄弟姉妹に事情説明し相続放棄の手続きを取ってもらう必要がでてきます。みな高齢であり、最近ではあまり交流も無い状況ですから、できれば迷惑をかけたくはありません。

相続人からの時効援用の検討

そこで、相続人から時効援用することを検討したのですが、ここで問題なのは、時効援用をしたものの消滅時効が認められなかった場合のことです。時効を援用するということは、被相続人の権利義務を承継するのが前提であり、相続の法定単純承認事由である処分に当たるとも考えられます

実際に、被相続人の債務についての時効援用が、相続の単純承認事由となるかは明らかではありませんが、下記の判例も参考になるでしょう。

民法921条1号本文が相続財産の処分行為があった事実をもって当然に相続の単純承認があったものとみなしている主たる理由は、本来、かかる行為は相続人が単純承認をしない限りしてはならないところであるから、これにより黙示の単純承認があるものと推認しうるのみならず、第三者から見ても単純承認があったと信ずるのが当然であると認められることにある(昭和42年04月27日 最高裁判所第一小法廷判決 民集第21巻3号741頁)

仮に時効援用の意思表示をすることで相続を単純承認したものとみなされるのであれば、消滅時効が完成していなかった場合に、それから相続放棄をすることはできません。債務者本人は死亡していますから正確な取引状況は分かりませんし、訴訟や支払い督促により債務名義を取得されたことで時効が中断している可能性も考えられます。

そこで、まずは債権者から取引履歴の開示を求め、債務名義の有無についても確認を取ったうえで、時効援用するかの判断をすることとしました。それでも、時効援用をするにあたって完全には不安が払拭できませんし、さらに別の債権者にも債務がある可能性を考慮すれば、相続放棄をした方が安心であることは間違いありません。

つまり、1社に対して時効援用したことにより、その時点で相続を単純承認したとみなされたとします。そうであれば、後になって別の債権者にも債務があることが発覚したとしても、それから相続放棄することは困難だからです。

(最終更新日:2013年3月10日)

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