債務の承継を遺言により定められるか
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(公開日:2014年3月31日)
遺言者が自らの意思により遺言をすれば、何でも法的に有効なわけではありません。遺言によってできることについても、民法やその他の法律で定められているからです(法定遺言事項について)。
遺産の分割方法の指定は法定遺言事項に含まれますから、遺言により、遺産を誰にどのような割合で相続させるかを指定することはもちろん可能です。ところが、債務(消極財産)は相続財産に含まれず、遺産分割の対象にもならないため、遺言の対象とならないのです。
遺産分割の対象となるものは、被相続人の有していた積極財産だけであり、被相続人が負担していた消極財産たる金銭債務は相続開始と同時に共同相続人にその相続分に応じて当然分割承継されると解せられ、遺産分割によって分配されるものでない(東京高等裁判所決定昭和37年4月13日)
上記の裁判例によれば、債務については相続開始と同時に共同相続人にその相続分に応じて分割承継されるので、遺産分割協議の対象とならないとされています。相続開始と同時に分割承継されてしまうのですから、遺言の対象とすることもできないわけです。
債務の承継を遺言により定めた遺言の効力
ただし、遺言者の債務を誰に引き継がせるかを、遺言の中に書けないわけではありません。たとえば、事業を承継する長男が全ての債務を負担するといった具合の遺言です。
法定遺言事項以外のことを書いても遺言全体が無効になるようなことはなく、ただ、その条項が法的効力を持たないだけです。法的効力がないということは、つまり、遺言者の希望を記したに過ぎないということです。
したがって、必ずしも相続人がそれに従う義務はありません。また、債権者との関係においても、「遺言があるから、長男以外に支払い義務は無い」というような主張は認められないということです。
それでも、このような遺言を相続人が受け入れるのは、当然のことながらまったく問題ありません。また、それに従って債権者との間で交渉をおこない、長男が債務を承継する旨の契約を結ぶことももちろん差し支えありません。
遺言者の意思を明らかにしておくことで、債権者の合意が得られやすくなることも考えられますし、個々のケースによっては債務の承継を定めておく方が良いこともあるでしょう。
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