「相続させる」旨の遺言で受遺者が先に死亡したとき | 千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅徒歩1分)

「相続させる」旨の遺言で、遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者よりも先に死亡した場合、その遺言は効力を生じないのが原則です。ただし、遺言者が「相続させる」とした推定相続人(本件では長男A)の代襲者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき「特段の事情」があるときには、代襲相続の効力が生じることもあります。

「相続させる」旨の遺言で受遺者が先に死亡したとき

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(公開日:2014年8月7日)

遺言書を作成し、下記のような遺言をしていたとします。

「遺言者Aは、遺言者の有する下記の財産を、長男Bに相続させる。」

もしも、遺言者である父Aよりも、長男Bが先に亡くなってしまった場合、この遺言の効力はどうなるのでしょうか。

相続させる旨の遺言と代襲相続

結論からいえば、上記のような「相続させる」旨の遺言で、遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者よりも先に死亡した場合、その遺言は効力を生じないのが原則です。

遺言が無効だということは、上図の相続関係の場合ならば、遺言者の妻および長女と、長男Bを代襲相続した孫とが共同相続人として分割協議をすることになります。

ただし、遺言者が「相続させる」とした推定相続人(本件では長男A)の代襲者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき「特段の事情」があるときには、代襲相続の効力が生じることもあります。

参考判例(最高裁判決平成23年2月22日)
上記のような「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。

特段の事情があるとされ、代襲相続が認められたのに、次のような事例があります(東京高判平成18年6月29日)。

  1. 遺言者Aが、特定の遺産をBに相続させる旨の公正証書遺言を作成
  2. Bが死亡
  3. Aが、Bの子に代襲相続させる趣旨の自筆証書遺言を作成しようとしたが、結局は完成させなかった。
  4. Aが死亡

どのような事情があれば、代襲相続が認められる「特段の事情」に該当するのか明確な基準はありません。もしも、代襲相続を望むのであれば、その旨を遺言で明らかにしておくべきでしょう。具体的には「予備的遺言」をしておくわけです。

孫に代襲相続させる予備的遺言の例

上記の事例で、遺言者Aよりも、推定相続人である長男Bが先に死亡したときに、長男Bの子に代襲相続させる旨の遺言は次のとおりです。

第○条 遺言者は、遺言書の有する下記の土地を長男A(昭和○年○月○日生)に相続させる。
(不動産の表示 省略)
第○条 遺言者は、遺言者の長男Aが遺言者の死亡前に又は遺言者と同時に死亡したときは、前条に定める土地を遺言者の孫(長男Aの長男)に相続させる。

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