相続の開始要件
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(公開日:2013年9月12日)
相続はどのような時に始まるのでしょうか。
旧民法では、被相続人が生きていても、隠居して相続を開始させることができました。
これは、法律的に認められていた制度で、戸籍に「隠居」と記載され、(一般的には)長男に戸主の地位や財産を譲渡し引退するのです。
しかし、現在ではそのような生前相続は認められていません。
「もう私は隠居したから、事業や財産は全部長男に任せているんだ。」などとおっしゃる方がいます。
それは、あくまで事実上そのような形を取っているということであって、法律的に認められているわけではありません。
現在の民法では被相続人が死亡した時に相続が始まる(民882条)と定められており、生前に財産を譲れば生前贈与となります。
被相続人が死亡した場合相続人となる立場の人は、相続が始まるまでは推定相続人と呼ばれます。
隠居したという父親から財産を任されている長男なども、法律的には推定相続人ということになります。
推定相続人というのは、相続人と名前がついているものの、ごく弱い権利しか与えられていません。
たとえ相続人が財産を不当に処分しようとしていてもそれを止めることはできません。
例えば、隠居したと言っていたお父さんがいきなり事業に復活し、財産の処分などを始めたとしても推定相続人にすぎない長男は法的には何もできません。
お父さんが生きている限り相続は開始されておらず、財産はお父さんのものなのでどうしようと自由なのです。
では、誰が相続人になるのでしょうか。
民法では、配偶者と一定の範囲の血族と定められています。
血族には相続に関する順位がついていて、第一位は被相続人の子となっています。
子供が相続の時点で死亡している場合や、相続人の資格を失っている時は、子供の子供つまり孫などが代襲相続人となります。
第二順位は直系尊属(父・母、父・母がいなければ祖父母)、第三順位は兄弟姉妹またはその代襲者です。
配偶者は常に第一位で、血族の相続人といっしょに相続人となります。
つまり、被相続人に子がいれば、配偶者と子が相続人、子がいなければ配偶者と父母が相続人となります。
生前相続はできる?(司法書士からの一言)
現行民法では、相続とは「遺産を承継する遺産相続」がおこなわれるだけで、戸主や家長などといった身分権を引き継ぐためのものではありません。したがって、隠居するといっても「明け渡すべき地位」がそもそも存在しないわけですから、法律上の意味はなくなっています。
一方、所有する財産については、生前贈与を活用したり、遺言書を作成することで、その行く末を自分で決めることが可能です。このように、自ら意思に基づいて、その所有財産の処分方法を決定してしまうことで、あとは「ご隠居さん」としてのんびりとした老後を過ごせるといえるでしょう。
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